フェノミナのレビュー・感想・評価
全4件を表示
ベルゼブブ(ハエの王)
アルプスの田園風景のオープニング。美女がバスに乗り遅れ、殺人鬼の魔の手に・・・といった独特のアルジェントワールドが繰り広げられるのですが、どうしても「アルプスの少女ハイジ」を思い出してしまう。
ハイジ?そんな可愛い物語じゃなかった!むしろ、ナウシカのハエ版。言い換えれば「ハエの谷のジェニファー」。美少女ジェニファー・コネリーが殺人鬼にいたぶられ、ウジ虫の湧く死体プールで溺れそうになり、殺人鬼親子が刑事も殺してしまう中で必殺“ハエ召喚超能力”を発揮してしまう話だ。チンパンジーのインガちゃん♀も大活躍!
とにかく終盤の怒濤のシークエンスには参った。ゴブリンの音楽やヘビメタサウンドがゴリゴリと神経を逆なでするのです。『デモンズ』は劇場で観たのですが、これも映画館で観るほうがいいかなぁ~
【”超絶美少女と蠅コンビ。”イタリアンプログレッシブバンド、ゴブリンの曲も効果的なグロイシーン満載だが、ダリオ・アルジェント独自の鮮血の美学溢れるホラー作品。】
■スイス北部の都市で少女を標的とした連続殺人事件が発生。
被害者の頭部に集っている蛆虫が事件の手掛かりと踏んだ警察と昆虫学者のマクレガー教授は、昆虫と交信できる不思議な能力を持つ少女ジェニファー(ジェニファー・コネリー)に事件調査の協力を求める。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・夢遊病の気が有る超絶美少女と蠅という、考えられないコンビが猟奇的殺人犯を追い詰めるという設定が秀逸である。
・ジェニファーの夢遊病の原因を探ろうと、頭に謎の器具を取り付けられるシーンは、明かに後年の北欧ミステリー「テルマ」に影響を与えていると思う。
・マクレガー教授が飼っている猿、インガが序盤に刃物で遊んでいる事を教授から窘められるシーンは、ラストの展開を示唆している。
■何より、真犯人が分かった際に(同情の余地はあるが・・。)ジェニファーが多くの死体
と蛆が浮いている地下プールのシーンはグロ過ぎである。
良く、若きジェニファー・コネリー、あのシーンを引き受けたなあ・・。
<ラスト、殺人鬼が匿っていたモノが分かるシーンや、ラストの凄惨なシーンは見応えあります・・。>
昆虫探偵誕生
ウジ虫くんモゾモゾ、ハエさんブンブン!
昆虫を愛し昆虫に愛される美少女ジェニファーの嫌悪たっぷりな捜査劇。
昆虫を介して事件の解決に迫る、という斬新な設定。
死骸に集る虫の種類から死亡時期まで正確に読み取る教授すごい。虫すごい。
そして何よりジェニファーの熱い能力。
彼女に一番力を貸しヒントを与えるのがハエやらウジやらの汚い虫なのが好き。
絶対に蝶を添わせることはしないところに並々ならぬこだわりを感じた。
転入先の寄宿学校でのいじめのシーンが結構キツイ。
わりと幼稚ないじめ方だけど、カメラワークといい寄って集って迫られる感じといい本当に嫌な気持ちになる。
そこからの逆転、ハエ集団の襲来がめちゃくちゃかっこいい。「みんな、大好きよ。」の台詞が痺れる。
しかしジェニファー、機転はまあまあ効くけどあまり頭は切れないようで。
変なところでドジったり、明らかに様子のおかしいブラックナーに渡された薬を飲んだり、そこで電話できるわけないじゃんとか…。
その辺のバランスがクセで好き。
死体とウジ塗れのプールにドボンは肥溜めに落ちるのと同じくらい勘弁願いたいところ。
途中までチンパンジーのインガちゃんが犯人かな、いやでも教授は殺さないだろうしあの純粋な瞳で人を殺せるかな、なんてグルグル考えていたらまさかの方向に真実があった。
あの化け物チャイルドは図体は小さくともだいぶいい歳いってると思う。力強いし生命力もなかなか。
以前の住屋である最初の小屋に繋がれていたのか。
造形の気持ち悪さは天下一品。ハエに食われる皮膚の引っ張られ感がたまらない。
最後のしつこすぎる畳みかけがやばすぎて楽しいやらびっくりやらで大変忙しかった。大好き。
鉄板で首が飛ぶって…完全にギャグである。かわいそうなモリスおじちゃん…ご冥福を。
そして唐突なインガちゃんのトドメ刺し。いつからここに。そこの救世主は虫じゃなくてサルなのね。
やっとこさ終わったあとの二人(一人と一匹)のそっと抱擁する姿にはなんだか感動してちょっと泣いてしまった。
ナイフで遊ぶなって教授に言われていたからあの手放し方だったんだなとか、目の前で殺された恨み少しでも晴らせて良かったねとか思って。
インガ役のチンパンジーに助演女優賞あげたい。
偶然だろうけど名前が「因果」なのが面白い。
虫のシーンはどうやって撮ったんだろう。
血液がピンクの絵の具じゃなくてちゃんと赤黒くなっていたことが嬉しかった。
それにしても主人公のみならず出てくる女性が見事に全員美女、美少女でよくここまで集めたなと謎に感心してしまった。
白い服を着たジェニファーとスイスの草原の景色があざといほど似合っている。その汚し方はもう個人の癖っぽい。
なかなか安心できない展開と、好き放題詰め込んだ感満載のポップなタッチが好きで本当に楽しかった。
一部音声がイタリア語吹替に切り替わる謎仕様だったけど、DVD作成時の事情なのかな。
新文芸坐オールナイト上映にて。この作品を劇場で観られて良かった。
英国ArrowVideo/英語音声の不具合
スコアは作品に対して。
レビューは、英国ArrowVideo版DVD・BDの英語音声について。
イタリア映画ではあるが、俳優の口元を見ても分かる通り、英語がオリジナル音声。
これは国際マーケットを視野に置いた結果。
アルジェント作品全てに共通。
輸出する際は英語音声の完全版(116分)だが、
国際配給を請け負った輸入サイドでカットした国際版(111分)を製作。
アルジェント・サイドでは、吹き替えのイタリア語音声フィルムしか保管しておらず、
英語音声版は国際配給を請け負ったサイドが保管。
しかし、カットされたフィルムは破棄されたのか、国際版にないカットの英語音声は喪失。
もはや、全編英語音声に因る完全版での観賞は不可能。
アルジェント作品で同じ状態にあるのが
『4匹の蝿』『サスペリアpart2』『トラウマ/鮮血の叫び』『スタンダール・シンドローム』。
カットした国際版が製作されたが、米・オライオン映画が完全版も保管していた為
『オペラ座/血の喝采』は英語音声の欠落の難を逃れている。
英語音声欠落部は、
イタリア語(若しくは他の吹き替え・新録)に置き換えに成るが、
現存する英語音声を全て活用する完全版の復元は技術的に可能。
前述の4作品は、BGMが連続していないシーンへの挿入なので容易。
反面『フェノミナ』は、ラフ編集とも云える完全版から、細かく再編集されており、
BGMが連続したシーンに、欠落部を挿入する作業が不可欠。
これには、セリフ・効果音・BGMがミキシングされた一つの音声トラックでは不可能で、
リミックス前の別々の独立した音声トラックが必要。
(DTSなどデジタル音声時代前の)フィルムは、セリフ・効果音の音声トラックと、
サウンド・トラックが分離し二つのトラックから成る。
吹き替えの必要な海外のTV局には、全てリミックスされた通常の音声トラックと、
セリフがない吹き替え用の効果音とサウンドのみの二種類の音声トラックを納入。
個人レベルでは無理だが、
DVD・BDを発売する業者なら、これらの素材の入手は可能。
複数の素材を入手し、複雑で面倒な編集を駆使しなければならないが、
技術的には、英語音声を全て活用する完全版の復元は可能。
しかし、英ArrowVideoはこれを怠り、全てリミックスされたイタリア語音声と英語音声を用意したのみで、
イタリア語音声のボリュームの強弱を変えたりし、英語音声をボイス・オーヴァーの様に被せ、誤魔化している。
しかも、映像と音声の周期に大きなズレが生じ、
本来、音のない処でセリフや効果音が聞こえる。
これは明らかなミス。
就寝前のソフィとの会話シーン*古校舎から転落〜地元青年に拉致シーン
*ソフィ殺害シーンなどが相当し、BGMが連続していない事に気付く。
映画全体から見れば、ごく一部分ではあるが、
観賞者は萎えてしまう。
今回の音声処理はアマチュアでも可能である。
BDの映像は申し分のない出来で、美しい。
しかし、映画は映像と音声の同期した複合娯楽。
どちらも手を抜いて欲しくない。
業者としてプロのポリシーを持って欲しかった。
そして、懸念する事が一つ。
日本の映像メディア発売業者が、このArrowVideo版の権利を得て、
英語音声に問題のある事を無視し、字幕を付け発売する事。
※但し、これは英語音声に限り不備があると云う事で、
イタリア語音声を含め他の吹き替えには、このような問題はありません。
アルジェント監督作品のなかでも上位を占める人気作であり、
恐怖映画としての出来も上々です。
そして、俳優本人に本当に吐かせる非常に稀なシーンが存在しており、
映画史上類を見ないものです。
他にも見所は多く、アルジェント、ジェニファー・コネリーのファン以外でも、
満喫出来ると思います。
英語音声の問題はあるものの、一見の価値のある作品です。
全4件を表示