劇場公開日 1971年5月1日

「人生を彷徨う男の詩」ファイブ・イージー・ピーセス Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人生を彷徨う男の詩

2020年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

初期のアメリカニュー・シネマの中で最も感銘を受けた作品。それまでの映画の形を小説に例えるなら純文学とすると、ニュー・シネマは日本でいう私小説であり、随筆に近い。ドラマとしての面白さや感動を訴えることより、作者が思う心の表現として映像を媒体とする形になった。感動より共感・共鳴の個人的な、または限られた鑑賞法に変化した。
この映画は、人生の挫折を味わった人には、主人公がなぜドロップアウトしたのか、なぜ慕う人を避けるのか、なぜ家出したのに自分の無能を父に告白したのか、そして、どこまで逃げるのか、それらの具体的な説明や描写がなくても理解しようとするのではないか。そこにこの映画の面白さ、良さがある。唯一、途中二人のヒッピーと交わす会話のシーンが笑いを誘う。彷徨い続けるジャック・ニコルソンの救いのない虚しさ、愛しても答えがない関係に気付かないカレン・ブラックの哀れさ、がいつまでも気にかかる映画。

Gustav