「時代に殺された若き反逆児」左きゝの拳銃 TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
時代に殺された若き反逆児
何度も映像化されたビリー・ザ・キッドを主人公に、巨匠アーサー・ペンが初メガホンを執った作品。
生前から新聞や各種読み物などの媒体で面白おかしく戯画化されたウィリアム“ビリー・ザ・キッド”ボニー(出生時の本名はヘンリー・マカティーといわれている)。
多くの映画で脚色されており、本作もまた、ましという程度。はっきりした事実はかつての仲間パット・ギャレットに21歳で射殺されたことぐらいだが、それすら異論がある。
わずか21歳で落命するまで8人(あるいはそれ以上)の命を奪ったビリーの行為は許されないが、のちの名監督A・ペンは時代の不条理の中で堕ちてゆく若者の不幸を独特の視点で捉える。
丸腰の牛商人を待ち伏せして撃ち殺す町の有力者たち、ビリーを匿っただけで焼き討ちにあう牧師一家、一方的な秩序や報復の名のもと安易に繰り返される殺戮――。こうしたたぐいの無法は映画公開当時の公民権運動の頃まで延々と続き、その後もあとを絶たない。
マクスウィーン夫人の「法はこれを許すの?」との問いが虚しく響く。
凝ったカメラアングルに時おり見せるスピーディーなアクションなど初監督作品にしてペンの冴えた演出が光る(射殺されたボブのブーツを指さして笑う少女はシュール過ぎるが)。
ギャレットを演じたジョン・デナーやモールトリー役のハード・ハットフィールドら、脇を固めた役者の好演も印象深い作品。
それだけに古臭すぎるBGMが残念。
体制や時代の流れに抗う反逆児を数多くこなしたP・ニューマンは撮影当時すでに30歳過ぎ。21歳で死んだビリーを演じるのはさすがに無理があったと思う。
制作側もそれを意識してか、作品前半のニューマンはやたらとはしゃぐが、悪目立ちして、かえって作品の質を損ねてしまっているし、そこもまた残念。
メッセージ性も違うし、同じ年に公開されたという以外に接点はないと思うが、ラストでビリーが殺されるシーンになぜか『灰とダイヤモンド』のマーチェクが重なる。
NHK-BSにて視聴。
A・ペン監督作品が続いているが、どうせなら『ミズーリ・ブレイク』(1976)も放送して欲しい。
何といってもマーロン・ブランドとジャック・ニコルソンの共演作。
それだけで観てみたくないですか?!