「書くことは恐ろしい特権」遙かなる帰郷 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
書くことは恐ろしい特権
イタリア、トリノからアウシュビッツに収容されたプリーモレーヴィ の、収容からソ連を経由したイタリアへの帰還までの記録文学the truce 休戦が原作。
イタリアやギリシャからも収容されていたこと、
ソ連軍が連合国側として、アウシュビッツを解放し途中紆余曲折ひどい扱いもあったが、ソ連北部から列車を仕立てイタリアまで送還したこと、時間はかかったが、意外と最後までイタリアまでの送還をになったのだということにやや驚きもあり、サウルの息子などのようにあまりにも残酷で痛々しく夥しい死者などはなく、そこで起こったことは淡々と他のホロコーストの映画よりモデストな表現、長い休暇とさえ記録されるソ連での日々は辛いことも多く不安も憂鬱もあったが、人間性を人間としての尊厳を少しずつ強固にしていく旅だった。最後いよいよイタリアに向かう途中、ミュンヘン駅、ドイツ領に入った時の緊迫感。
アウシュビッツでソ連兵から衣服を支給され、皆がユダヤ人の収容服を脱ぎ捨て焼き払う中、プリーモは記録のためともう一度袖を通す。ミュンヘンで連合国側の下で線路工事わやするドイツ人労働者に、収容服とユダヤの星のワッペンを見せる、うなだれひざまづいて謝罪する屈強な労働者り
美しく文化的で豊かなトリノの自宅に戻り、なぜ理不尽に突然に、にんげんとしての豊かな生活が奪われ貧しく虐げられ一切れのパンを争うような目に遭うのかと問いかけて終わるが、まさに今も異なる時代であっても異なる場所で同じことがなされている人間の愚かさ。
アウシュビッツでは地獄の時間をすごしながら、小さな出会いや、短い瞬間の感情の動き、忘れてはならない記憶などがこの生きて帰還された人々の支えになっていただろうことがさまざまなシーンで思い知らされた。