遙かなる帰郷

劇場公開日:1998年6月6日

解説

アウシュヴィッツから奇跡的に生還したプリーモ・レーヴィが、故郷イタリアへ戻るまでの8か月の旅を書き記した記録文学のベストセラー『休戦』の映画化作品。監督は「黒い砂漠」「パレルモ」のフランチェスコ・ロージ。製作はレオ・ペスカローロとグイド・デ・ラウレンティス。脚色はロージと「みんな元気」のトニーノ・グエッラ。脚本はロージとステーファノ・ルッリとサンドロ・ペトラリァ。撮影は「湖畔のひと月」のパスクワリーノ・デ・サンティスだが、撮影中に死去。その後をマルコ・ポンテコルヴォが受け継いだ。音楽は「イル・ポスティーノ」のルイス・バカロフ。美術は「小さな旅人」のアンドレア・クリザンティ。編集はロージ作品には欠かせないルッジェーロ・マストロヤンニだが、編集中に死去。その後をブルーノ・サランドレアが受け継いだ。衣裳は「イノセント」のアルベルト・ヴェルソ。出演は「バートン・フィンク」「ガール6」のジョン・タトゥーロ、「ビフォア・ザ・レイン」のラーデ・シェルベジヤ、「心のおもむくままに」のマッシモ・ギーニ、「カストラート」のステーファノ・ディオニジほか。

1996年製作/118分/イタリア・フランス・ドイツ・スイス合作
原題または英題:La Tregua
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1998年6月6日

あらすじ

1945年1月26日、連合軍に押されたドイツ軍は収容所を放棄して撤退を始めた。アウシュヴィッツから解放されたプリーモ(ジョン・タトゥーロ)は、一緒に生き残った友人ダニエーレ(ステーファノ・ディオニジ)とは輸送トラックが別になったので、ひとりで連合軍の命じる地へと向かう。ポーランド、クラクフに向かう列車で彼はモルド(ラーデ・シェルベジヤ)というギリシア人の男に出会う。モルドは混乱下を生き抜くための知恵をたくさん持っていて、プリーモは彼に敬意を抱くが、実生活で役に立たないプリーモをモルドは見捨ててひとりで行ってしまう。プリーモはポーランドのカトヴィッツェにあるソ連軍の中継キャンプで数か月を過ごすことになる。そして4月になり、ベルリンは陥落。キャンプはヒトラーの死に沸き立った。プリーモたちイタリア人は故郷を目指してロシアのオデッサに向かう。ロシアの国境を越えた時、線路が破壊されたので機関車を降りた彼らは、近くの中継地スターリエ・ダローギの赤い家まで歩くことになる。到着すると、そこにはあのモルドがいた。彼は故郷ギリシアへのバスを待つ間、女たちの売春を斡旋して稼いでいたのだ。そこには平和な光景が広がっていた。ふとアウシュヴィッツの記憶を思い出したプリーモは、解放されてから初めて激しく泣いた。そしてプリーモはルーマニア、オーストリア、ドイツと巡り、8か月の旅の末、母と兄弟の待つトリノに戻る。彼は自分の体験したことを人々に伝えようと、ペンを取った。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第50回 カンヌ国際映画祭(1997年)

出品

コンペティション部門
出品作品 フランチェスコ・ロージ
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映画レビュー

2.0何がプリーモ・レーヴィを自殺に追いやったのか…

2025年7月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

TVのドキュメンタリーでプリーモ・レーヴィ
のことと、この作品の存在を知り、初鑑賞。
アウシュヴィッツからの帰還した
著名人としては、
「夜と霧」のヴィクトール・フランクルが、
つとに有名だが、この本を読んだり、
関連するドキュメンタリーを見ている内に、
フランクルの著書には幾つかの創作がある
ことを感じていた。
それは、彼は回想録で、4歳にして
“自分もいつかは死なねばならない…
人生の無常さがその意味を無に帰してしまう
のではないか”
と悟ったとしたとの話や、
破壊されたシナゴーグの天井の破片にあった
“モーゼの十戒の文字に神の啓示を感じた”
とか、果たしてそんなことがあるだろうかと
感じざるを得ない、彼の文章には
強い修飾癖があるように思うからだった。

そんな中、せっかくアウシュビッツから
生還したにも関わらず、
世の中がまた似たような状況に推移している
ことを感じて自殺したとされる作家レーヴィ
(事故死との見解もあるようだが)
の人生に興味を覚えて観てみた。

しかし、この映画の内容は、
私がドキュメンタリー番組で興味を惹かれた
郷里に戻ってからの彼を描くものではなく、
強制収容所解放から郷里に戻るまでに
心の平和を取り戻すレーヴィを描いた
とするものであって、
しかも、それをどうしても捉えきれない
私にとっては難解な作品に。

それは、長々としたソ連兵士との描写が
私には理解不能だったり、
また帰郷の仲間となるメンバーとの関係を
理解するのも容易ではなく、
実話をベースとしているからかも知れないが、エンターテイメント作品としては、
多少省いたり創作したりして、
もう少し分かりやすく整理編集して
欲しかったように感じた。

この作品は、地味な内容ながら、
キネマ旬報ベストテンで満点評価をした
選考委員が3人もいて、
結果14位に選出という高い評価を受けた。
それなのに、レーヴィがアウシュビッツ解放
から郷里にたどり着くまでに
取り戻した心の平和を描いたと
評価された点において、彼のそんな徐々感に
私はその変遷を感じ取ることは出来ず、
己の洞察力の未熟さを突き付けられた
ような鑑賞だったのかも知れない。

それにしても、この映画の企画が
プリーモ・レーヴィの自殺の一因となった
との話や、
彼の自殺の数年前に
イスラエルによるレバノン侵攻があり、
同胞との軋轢に苦悩していたとの
情報もあり、
私にとっては、彼の苦悩と自殺の真相が
なんであったのかが、
更なる謎となる鑑賞となってしまった。

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KENZO一級建築士事務所

1.0イタリア人のロシアでの映画なのになぜ英語なのか?

2024年2月26日
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鑑賞方法:VOD
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2023年6月17日
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鑑賞方法:VOD
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