劇場公開日 1954年4月20日

「傑作中の傑作、フランス映画の真髄に触れた実感がします」嘆きのテレーズ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0傑作中の傑作、フランス映画の真髄に触れた実感がします

2019年6月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

シモーヌ・シニョレ31歳
まだまだ若いのにもう少し年上に見える、生活に疲れた風情を大人の女性の色香との微妙なバランスで魅せます
圧倒的な存在感が画面に目を釘付けにします

相手役のラフ・ヴァローネは36歳
男の性的魅力をテレーズの夫カミーユとの対比で強調されています
本作前年の米国映画の欲望というなの電車のマーロン・ブランドを思わせる造形です

二人が出会ったときの化学反応が、ほんの僅かな目の表情だけで、火花が飛び散るようなものであったことを雄弁に語る名演技でした

男と女が出会う
何も起こらないことが普通なのに、何故かこのような激烈な化学反応を起こして本物の恋愛が始まる不思議

運命?
そうかも知れないし、そうでないかも知れない
運命を変える男を無意識に待っているテレーズに運命を変える力を持つ男が現れる
それだけでは化学反応は起こらないはず
何がそうさせたのでしょうか?

それはテレーズの美しさ、はかなさかも知れません
それがローランの理性を狂わしたのかも知れません

パリ行きの夜行列車は事件の起こる列車で彼女とローランは途中下車しましたが、二人の運命を最終的に行き着く処まで運んでしまう列車であったのです

郵便回収のエピローグに続くリヨンの空の下に鳴るサイレンが正にエンドマークでfinの文字に重なります
見事な鮮やかな終わり方でした

フランス映画の真髄に触れた実感を得ました
傑作中の傑作だと思います

あき240