「観客を虜にする天才プレイボーイの手練手管。」天国から来たチャンピオン Garuさんの映画レビュー(感想・評価)
観客を虜にする天才プレイボーイの手練手管。
プロデュース・監督・脚本を兼務、そして主演。 エネルギッシュな人である。
女性にモテる男の特徴は、マメであることに尽きると言う。 こういう大胆さと繊細さを併せ持った作品を創れるウォーレン・ベィティは、一級品の才能を持った映画人であると同時に、やはり噂にたがわぬ天才プレイボーイなのかもしれない。
まず、脚本が素晴らしい。 いくつものコメディを手掛けているエレイン・メイとの共同脚本だが、二人で相当に練り込んで書き上げたのだろう。ドラマの構成、展開、セリフの細部に至るまで、神経を使い尽くし、考え抜かれて書かれているのがわかる。
そして特筆すべきは、思い切った演出手法。
事故で亡くなった男の魂が、別の男の身体を借りてこの世に蘇る物語なのだが、通常の映画やドラマなら、当然、二人の男を別々の男優が演じるはずだ。
ところがこの作品では、二人の男を、ウォーレン・ベィティが一人で演じる。 アメフト選手ジョーの魂が大富豪レオの身体で生まれ変わって七転八倒する物語の顛末を、最初から最後まで、ベィティの演技だけで見せ切るのである。
つまり、あくまでも「魂の主」がこの作品の主人公であるという事を、ベィティの姿を通して観客に教えようとしているわけだが、この手法が抜群の感動効果を生み出す。
最後の最後に、ジョーの魂が別のフットボール選手として生まれ変わる場面でも、演じるのはやはりベィティ。 ラスト10分のくだりでは、ベィティの演技の巧みさもあり、非常に強い感動で心を完全に持っていかれた。
作品のトーンは、アメフト選手ジョーの陽気で楽天的な性格によって色付けされており、終始、軽いコメディのノリだ。 だが後半、ヒロインとの恋愛物語が展開していくにつれて、徐々に「愛と魂の神秘」の色合いが現れてくる。
ベィティの洒脱な演技で牽引していきながら、いつの間にか作品の奥にある深淵なテーマへと観客を導いていく。 そして最後は、上質な恋愛ドラマを観終わった時のような深い感動に浸らされる。
ヒロインとのキスシーンは、アメリカ映画とは思えないほどに控えめ。 軽薄に映りそうな部分を、注意深くそぎ落としているようにも見える。
女を口説き落とすために、自分の全てを投げうって女に尽くすプレイボーイが、観客を感動させるために、全身全霊で創った作品➖という印象だ。
というわけで、完全に一本取られた。 百戦錬磨のプレイボーイの手に掛かった女性の気持ちとは、こんな感じなのだろうか。
男前で才能もあり、女にマメ。
ぬぅぅぅ、、、ウォーレン・ベィティ、憎い!憎い!憎い!