劇場公開日 1955年3月7日

「クセの強い内容でありながら居心地がいい」鉄路の斗い あま・おとさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0クセの強い内容でありながら居心地がいい

2024年10月13日
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鑑賞方法:VOD

ルネ・クレマン監督の作品続きで観る。
占領下フランスの国鉄職員のレジステンスを描いた映画ということで、古い映画だし、ドキュメンタリー風らしいので期待はしていなかったけれど、意外になかなかの満足感。

白黒で音楽はほとんどなく、登場するのはほぼ男性ばかり。それぞれの使命を淡々と果たしていく様子が描かれる。渋い!ふだん観ない類のもの。ところが…この渋さが結構よかった。余計なものがないので何がどうなる、ということに集中できる。
実物を使ったロケの魅力もあり、いつの間にか、先へ引き寄せられていく。
映画において、シンプル、ということは結構いいものだな、と思った。

事のいきさつを理解するのに邪魔になりがちな、お涙ちょうだい的なものや個人の背景などがほとんど排除されているわけだけれど、いのちの重みや心理については、少ない表現で上手に加味されている。そこには、観る者の想像力を引き出すよいセンスが感じられると思うし、観る側が持つ想像力への信頼も伺えるように思う。

クセの強い内容でありながら、居心地がいい映画だったのは凄い。

あま・おと