チャイナ・シンドロームのレビュー・感想・評価
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【”メルトダウンの恐ろしさと、それを隠蔽しようとする原発会社。”今作は、原子力発電の孕んだ危機を世に初めて映像として出した意義ある作品である。】
ー 40年以上も前の作品でありながら、2025年の現代に観ても恐ろしき作品である。それは、この作品以降に現実に世界で起きたメルトダウンの恐ろしさの数々<チェルノブイリ原発事故、福島第一原発事故>を実体験して来たからであろう。
故にこの作品の意義は公開当時以上に増していると思うのである。-
■原子力発電所を取材中のTVキャスター、キンバリー(ジェーン・フォンダ)とカメラマンのリチャード(マイケル・ダグラス)らは偶然にも事故現場に立ち会うが、TV局の上司ドン・ジャコビッチ(ピーター・ドゥナット)はなぜかそのニュースを放映禁止にする。
また、それをきっかけに施工の際の溶接の不具合による振動に気付いたベテラン技術者ジャック・ゴデル(ジャック・レモン)は、原発を止めるように求めるが、阻止され強硬手段として制御室に拳銃を持って立てこもる。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・取材の際に偶々出くわした事故を目撃したTVキャスター、キンバリーとカメラマンのリチャードの、あわてふためくジャック・ゴデル達の姿を見て、原発会社側の些細な事故と言う発表を鵜呑みにせずに、ジャーナリスト魂で真実を求める姿。
・又、ジャック・ゴデル自身も自分だけが感じ取った”振動”の原因を追究していく過程で、施工時の溶接の不具合と、確認過程で施行会社がキチンとした確認を取らずに、同じ写真を焼き増しして、調査回数をごまかしていた事に気付いた時の驚愕の表情をジャック・レモンが、正に迫真の演技で魅せている。
<ジャック・ゴデルが原発を止めようと制御室に立てこもる中、原発会社社長がバーナーで戸を溶断させ、特殊部隊の発砲により彼が射殺されるシーン。
だが、TVカメラの前でそれまで会社側に立っていたジャックの親友の同僚テッド・スピンドラー(ウィルフォード・ブリムリー)が言い放った言葉。”彼は異常ではなかった。異常なのは、会社側だ。”
そして、無音のエンドロールが延々と続くのである。
今作は、メルトダウンの恐ろしさと、それを隠蔽しようとする原発会社”原子力発電の孕んだ危機を世に初めて映像として出した意義ある作品なのである。>
感動が、ブラジル・シンドローム
ジャック・レモンをずっとヘンリー・フォンダだと思っていた。
初見は映画よりも登山ばかりしていたガキの頃で、「月曜◯◯ドショ◯」だと思う。ずっとテレビ局の制作のドラマだと思っていた。また、
ジャック・レモンをずっとヘンリー・フォンダだと思っていた。(二人は似てる)
また、ここで描かれているのは、ヒューマン・エラーと悪徳業者とその陰謀で、原発事故の怖さをえぐったものとは言い難い。しかし、改めて2回目の鑑賞で、あり得ない設定がデフォルメに見えて、きちんとした考えを二代目の役者たちは持っているのかもしれない。と感じた。
僕は、題名から「中国に対する黄禍論」とずっと思っていた。つまり、技術力の無い国が技術力や保安の知識が無いまま、こう言った事をやろうとすると、終止がつかなくなると言っていると思っていた。(中国は1972年から原子力を民生に使い始める)
だから、本当の事故が起きた時に「ヒューマン・エラー」が最初に取り立てられ、原子力発電の矛盾点は放置されたままになった。二代目の鋭い読みは、逆の立場の者たちに利用されたのである。
大変に残念な映画になってしまったと思う。
さて、報道の問題も提示されていると思うが、この報道が愛の無いAIにするという。なんか怖い話だ。つまり、スクープ報道が無くなる訳で、どのチャンネルやサイトを見ても同じと言う事だ。
二代目は初頭に原子力発電所の事を「新しいダイナマイト見たいなものさ」と言っている。アインシュタイン博士が生きていらっしゃれば、同じ事を言ったであろうし、マイケル・ダグラスはアインシュタイン博士と同じ民族で、博士を尊敬しているはずである。あっ、これは僕の勝手な思い込み。
「100%安全」はないが「正確な情報発信」はできる
無音のエンドロールの意味
スリーマイル島原発事故の3ヵ月前の公開、事故を予言したと有名
原子力発電所の事故隠しの内幕を描いています
利益と安全のバランス
100%の安全なんてものは世の中に存在しないことは少し考えれば当たり前のこと
経済的な合理性の範囲内で十分な安全を図ることで文明社会は成り立っています
鉄道だって飛行機だってガスコンロだって同じです
しかし原発事故は一旦起こった時の被害の甚大さと後世にまで数十年以上もしかしたら数万年に及ぶ取り返しのつかない事態を起こすところが違うのです
そこが普通の利益と安全のバランスと違うところ
そんなことは百も承知のこと
しかし事故はスリーマイル島で起き、チェルノブイリで起き、福島で起きました
大事には至らなかった小さな事故ならそれこそ無数に世界中の原発で起こってきたはず
かといって原子力を無くしてしまえというのは、もはや私たちは後戻り出来ないところに来てしまっているのも現実なのです
電気なしには暮らせませんし、いまさら二酸化炭素を盛大に排出する火力発電所に頼れません
再生可能エネルギーは所詮付け足しに過ぎないことも現実をみればあきらかなこと
私たちは知恵の実を食べてしまったアダムとイブなのです
楽園を追放されてしまったのです
イチヂクの葉で陰部を隠すように、原子力事故発生の恐怖を意識の下に押し込んで隠してしまうしかないのです
本作は同時にテレビ局の内幕を描いてもいました
マスメディアは正義の味方?
そうではない
ジャーナリストは正義の味方?
そうではない
個人が正義を貫いたかどうかなのです
フリーのカメラマン、ステップアップを目指す女性レポーターがそうであったからです
福島の悲劇
マスメディアは電力会社や政府を批判はすれど、自らの責任には自己批判をしていたのでしょうか?
マスメディアの責任の有無を検証したのでしょうか?
電力会社からの大量の広告収入に麻痺させられてきたことはなかったのでしょうか?
マスメディア自身も電力会社と同じく、利益と公衆の安全のバランスの上に成り立っていたのです
マスメディアが正義だとか、ジャーナリストが正義だなんて嘘です
あの二人が居なければマスメディア自身が事故報道を封印して、本当の原子力災害が起こっていたはずなのです
個人が正義を貫けるか?
個人の利害、所属する組織の利害を超えて、正義を貫ける信念を持っているかどうかです
それだけなのです
まるで本作で描かれたことがこの日本でも起こっていたとは言えなくはないのでしょうか?
その正義を貫くべき時が、自分にもあなたにも訪れることがあるかも知れません
その勇気を持てるかどうかなのです
家庭、将来、安定
そんなものを全て脳裏から振り捨てて、正義を貫けることができるのか?
それが本作が私たちに問われていたことなのです
でも個人が正義を貫いたとしても、果たして電力会社やマスメディアという巨大組織に通じるものなのか?
劇中の公聴会のシーンでいくら意見をしても聞く耳を持たない電力会社に反対派の人々は口を縛って無言のパフォーマンスをしていました
本作のエンドロールもまた無音でした
無言の抗議だったのです
個人の行動は無意味なのではない
やれることはあるのだ
そういうメッセージだったのです
初老の原子炉管制室の主任を演じたジャック・レモン
流石の名演技でした
コメディ風味は封印してシリアスに徹しています
しかし目の色、表情にはシリアス一辺倒だけでない様々な感情の動きが伝わる物凄いものでした
アカデミー賞初め多くの映画賞を獲得したのは当然です
重いかなって思ったけど
社会派サスペンス映画
これと同じようなことが日本で起こるとは。
これは観るべき
有意義な映画
総合:70点
ストーリー: 75
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 70
音楽: 60
東日本大震災後の福島の原発事故が起きる前、日本でも電力会社が「日本の原発は絶対に安全」などとまるで神のごとく完全な信頼があるかのように振舞っていたのを覚えている。そもそも人間の作るものに完全なものなどあろうばすがない。彼らは何をもってそのように思い上がったことが言えたのか。実際に福島の事故以前にも日本でいくつかの原発事故が発生し、しかもそれを情報公開しなかったなどの見苦しい失態を重ねた。そして今回の福島の事故、やはり対応が遅れ情報公開が遅れ、問題だらけである。この映画のような会社の都合による情報公開や運営が結局どこででも実行されうるという意味で、この映画は公開から30年以上経過して今だにとても先見性があったと言える。
実は私は経済的観点から全面的な原発反対派ではないのだが、それでもこの映画だけではなく現実にこれに近いことが起きているであろうことにはやはり恐怖を抱いてしまう。このような啓発的な映画が偶然にもスリーマイル事故の直前に公開され人々の関心を引いたことは、社会にとって今なお有意義である。
現実が映画を超えてしまった今、改めて考えたい
原子力発電所の事故にまつわるサスペンス。1979年、米公開直後にスリーマイル島原子力発電所事故が起きてしまい話題となった作品だそうです。
観たことはあるんです、たぶんバブルの頃。でも何につけ楽観的な風潮だったし、日本の原子力発電所はまだまだ施設が新しかったし。なにより日本のお役人を信じていたし。
情けないけど、SFを見るような印象だったかもしれない。
現実が映画を超えてしまった今、稼働中の施設も多くが老朽化してきた今、改めて観て考える機会を得たのはありがたいことでした。
魅力的な登場人物を演じたジェーン・フォンダ、ジャック・レモンは素晴らしかった。制作・主演を兼務し、問題を世に問うたマイケル・ダグラスの涙は本物、感動しました。
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