「鍵を返さない男」ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)
鍵を返さない男
切ない、ため息のような女性の歌声と共に映画は始まる
話(実話)は暗い
歌っているのはルース役のリチャードソンだろうか
ホステスのルースは店の2階で息子のアンディと暮らし
将来は彼を寄宿舎に入れて娘も引き取りたい、とか
もっとまともな店で働きたい、とか
それなりの夢を持っている
崇拝者というか支援を申し出るデズモンドもいるが
ハンサムで〈いいとこのぼん〉らしいレーサーの
デビッド・ブレイクリーと関係をもつ
自分勝手で何故か彼女との関係を解消せず
母性本能に訴え、落ち込むたびに訪ねてくるような…
そして酒にも溺れ、暴れたりする男を
ルパート・エヴェレットが好演
彼は自身が恵まれた環境にも関わらず
劣悪な環境で育つ幼いアンディから母親を奪うかたちにも…
小部屋で眠る彼を尻目に
「ひとりじゃ眠れない」なんて言って
ルースのベッドに潜り込む大の男
デズモンドと一緒に殴ってやりたいけど
これも彼の愛のかたちとルースはとらえ、幸せなのか
この辺が事件が大騒ぎになった時
彼が同情されなかった所以なのだろう
(ルースは絞首刑だし… アンディの人生は… )
そして階級社会の英国では彼の家庭環境は上位だからこそ
殊更・批判されるのかな、とも思った
下位層に対する配慮の無さみたいなところが
不文律を破った、という感じで
アンディがデズモンドの戦時の写真とピストルを見つけ
彼を見る目が尊敬に変わる
ルースの母親は戦争難民らしいので
デズモンドにはそんな気遣いもあったのだろうか
心に余裕のないルースはそんなことには思い至らない
結婚も望んでいなかった彼女が
彼女から離れない男の弱さや甘えも暴力も愛だと信じながら
真綿で首を絞めるように苦しめられ
怒りで狂気をおびてゆくような処もわかるような…
店を覗く眼鏡が怖かった
ミランダ・リチャードソンがとてもよかったです
演技力も確かなのですが
金髪と赤い口紅が引き立つ、真っ白な肌が印象的でした
透明感というより おしろいの白、その香りが漂うような肌
Would you dance with a strangerという曲は
彼女の見たひとときの甘い、もうひとつの夢(ロマンス)への誘いのような曲でした
映画の中で何回か流れ
ルース(リチャードソン)も歌っています
マリ・ウィルソンのアカペラっぽいのが やっぱり甘やかで、魅力的でしたね
ペギー・リーのも有名らしいですが、私はこっちの方が甘くて好き