劇場公開日 2016年8月6日

「I am You.」タンゴ・レッスン talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5I am You.

2025年5月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

知的

幸せ

タンゴだから、で見たが映画そのものが自分の好みで参ってしまった。サリー(主演・監督)の現実はずっとモノクロ。テーブルもシナリオのアイディアを書きつける紙もパリのホテルでのサリーのパジャマも全部が白。美しい。

ブエノスアイレスで映画の撮影場所探しをするパブロ含めた3人の男性ダンサーとサリー。その途上のある一部屋での映像が素晴らしい。壁際の真ん中に大きなソファー、そこに寝そべるパブロ、その両側に一脚ずつ置かれた布張りの椅子にそれぞれ座る男二人。その映像が堪らなく美しい。見ているのは反対側の椅子に座っているサリー。そして4人は部屋から出て「リベルタンゴ」で一緒にタンゴを踊る。4人で自由に踊るタンゴ!幸福感でいっぱいになった。

前半はパブロのダンサーとしての矜持が凄まじくてむかついた。映画監督である自分がダンスの相手に従い続けることはできない、とサリーが言ったのは、最後のぶち切れで本心だと思う。

サリーはパリのサン・シュルピス聖堂を訪れる。そこにあるドラクロワの絵画「天使とヤコブの闘い」の前でサリーとパブロは再会し互いを理解し始める。ヤコブは闘った相手からこれからはイスラエルと名乗れと言われる(創世記32章28節)。だから?二人ともユダヤ人だから?今度は共にシナゴーグに赴くが、パブロはシナゴーグでも教会でも落ち着かない、根無し草だと言う。サリーも無神論者と言ってたから同じだろう。出会うべくして出会った二人。仕事とプライベートは分けたい、自分の仕事領域では自分がリードする。その二人の意気に私はもっともだー!と共感した。

映画「雨に唄えば」はダンサーにとってそれほどオマージュしたいものなのか。この映画でも雨の中で二人はタンゴを踊った。タンゴはいい。観客や他者に見られることを意識せず相手だけに集中できる。相手のちょっとした動きを感知してこちらも答えてずーっと踊れる気がする。最後に二人が川沿いを延々と踊り進む背景に流れる曲はサリーが作詞・作曲し自身が歌う「I am You」、チェロはヨーヨーマだ。

タンゴの世界は色にしたら黒と白、たまに赤。サリーが脳内で思い描く映画シーンはカラーで、3人のモデルのドレスは激しく叫ぶ色だった。

talisman
きりんさんのコメント
2025年5月5日

talismanさん
特報新聞記者になれますよ、
鑑賞後一気にお書きになったその筆の走りから、本編のドラマの激しさと光が伝わります!
それにしてもこのマイナーなDVDがお宅に有ったとはね・・
talismanさんご本人の”謎“が更に深まりました(笑)

僕は運動神経はあまり良くないほうですので激しいアルゼンチンタンゴはちょっと無理ですが、いつかゆっくり目の演奏で、タンゴご一緒したい気分です。

Shall we dance?

きりん