「タイタニックを舞台にした一人の女性の話」タイタニック Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
タイタニックを舞台にした一人の女性の話
総合:75点
ストーリー: 75
キャスト: 75
演出: 75
ビジュアル: 80
音楽: 75
「ポセイドン・アドベンチャー」のように、この不幸な事故をパニック物や脱出劇にすることも出来た。だがタイタニック号を舞台にした一人の若い女性の人生と恋愛の物語になった。タイタニックという題だし、そこの乗客の当時の階級社会などを描写しているし、後半には大勢の脱出の大混乱を描いてはいる。悲惨で不合理な金持ち優遇の救助の描写も良い。でもこの映画の主題はタイタニックの事故ではなく、一人の女性を描いたヒロインもの映画である。
人生を翻弄され自殺を考えるほど閉塞感に苦悩する女性に、ほんの一瞬差し込んだ外の世界へ通じる自由の光。短いけれども一生忘れることが出来ない出会いがあり、それが豪華客船と共に沈んでいったが、彼女の心の中ではそれはいつまでも輝き続けた。彼女は家から離れ一人の女性としての運命を切り開いていく。悲劇で儚いけれど、どこか美しくてロマンティックでもある。そんなとても女性向けな内容の映画になっている。
会ったばかりで命を懸ける恋に落ちてとかいうと、随分と軽薄だなあと普通は思ってしまう。だがケイト・ウィンスレット演じるローズには名家に生まれてその運命を託され窮屈さから解放されたいという事情があって、とにかく現状から逃げ出したくて救われたいと思っていた。そんなときに出会った、違う世界に生きるレオナルド・ディカプリオ演じるジャックという自由な貧乏人とわかりあえたからこそ、柵から解放され真実の愛に辿り着いたのかなと思う。彼女のいる世界では、彼女の意思などどこにも存在意義がなくて、家と両親によって全てが決められる。家のために大嫌いな婚約者と結婚するという選択肢を破棄し、彼を信じて彼と一緒に行くというのが、彼女が唯一自分で決めた人生の決定だった。その重大さがタイタニックの沈没という異常な環境で増幅され、生命を懸けた決断になった。だからわずか数日間という短期間とはいえ、とても濃密な重みのあるものになったと思う。
演出上しかたがないんだろうけど、特に重りでもついていない限り、死んだばかりの死体って普通沈まないよな。