「POLICE WOMAN」ダーティハリー3 TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)
POLICE WOMAN
 クリント・イーストウッド主演の人気シリーズ三作目。
 犯罪撲滅のためには手段を択ばぬ暴力刑事ハリー・キャラハン。高額賠償請求を伴う手荒な方法で強盗を撃退したせいで、人事課に左遷される羽目に。
 その際、昇格人事で面接した事務方あがりの女性警官ケート・ムーアに女性蔑視的な発想でダメ出しするが、凶悪テロ犯の対処のため現場復帰した彼が組むことになった相棒は…。
 人種対立や性差別に、多発する暴力犯罪、政治の介入等々、当時の社会問題てんこ盛りの感のシナリオを手掛けたのは名脚本家スターリング・シリファント。
 オスカーを含む複数の賞を獲得した『夜の大捜査線』(1968)が代表作だが、多くのパニック・ムービーにも携わった多才な彼らしい多彩な(?)作風に。
 一方で、背景にはベトナム帰還兵の問題も配されており、社会派的な一面も。必ずしもバイオレンス大好きな脳みそ二頭筋の人たち向けの作品ではないような気もする。
 音楽を担当したジェリー・フィールディングは左翼活動家でもないのに、ロシア系ユダヤ人という理由で赤狩りの標的にされた気の毒な経歴の持ち主(本名がヨシュア・イツァーク・フェルドマンという、いかにもな名前)。
 若い頃、エリントン楽団の名ピアニスト、ビリー・ストレイホーン(『A列車で行こう』の作曲者)に師事していただけあって、本作のジャジーでノリのいいサウンドも納得の仕上がり。
 黒人グループのリーダー、ムスタファを演じたアルバート・ポップウェルは、ここまでの三作すべてに異なる役柄で登場。愛称は「ポピー」。
 サンフランシスコの明るい日差しの元で撮られたシーンやBGMのイメージ、型破りなハリーと杓子定規な新米刑事ケートの噛み合わない関係がコントみたいなせいで、陰鬱な印象の強い前二作と違い軽妙なテンポでストーリーは展開するが、ケートが殉職するラストで一挙に暗転。
 残酷な結末だが、作品性を高めるのには必要なプロットだったと思うし、女性警官の殉職はその後ポリスアクションものの定番のひとつに。
 ハリーの相棒が女性警官というアイデアは加速する女性の社会進出という当時の風潮も影響しているが、ほかにも重要なモチーフが存在する。
 それは本作公開の二年前から足かけ5年に亘り放送された大ヒット刑事ドラマ『POLICE WOMAN(原題)』。
 タイトルが示すとおり、女性警官(潜入捜査官)が主人公だがその人気たるや放送中、本国での女性警官の志願者が爆発的に増加したといわれたほどで、デスクワーカーのケートが刑事を志すエピソードにも反映されている。
 日本でも民放で放送されたが、アメリカほどの人気が出ないまま短期間で打ち切りに。
 ちなみに邦題は『女刑事ペパー』。
 阿久悠先生なら、きっと観ていた…かも。
 BS日テレにて視聴。

