「ルーニー(イカれた)な世界で飛び出す、“何でもあり”のトリックプレイ」SPACE JAM 岡田寛司(映画.com編集部)さんの映画レビュー(感想・評価)
ルーニー(イカれた)な世界で飛び出す、“何でもあり”のトリックプレイ
世紀のスーパースター、マイケル・ジョーダンが、ワーナー・ブラザースアニメーションのアイコン的存在ともいえる“ルーニー・テューンズ”とバスケットボールの試合に臨む――「ロジャー・ラビット」と同様、実写とアニメの合成で描くファンタジーになっていますが、史実を重ね合わせてみると、これが結構奥深い。
物語の導入で描出されるのは、ジョーダンがNBAを引退し、野球選手へと転向→MLBに挑んでいるというもの。これは、1993~95年における実際の出来事です。劇中では、球団の仲間たちから「三振すらもイカしてる」と拍手喝采、野球少年の息子からアドバイスを受ける“バスケ界の神様”ジョーダン――いたたまれない……。本作は、NBA復活のキーとなったのが「“ルーニー・テューンズ”との出会いだった」というフィクションを加えた「ifの物語」になっているんです。
ジョーダンが“ルーニー・テューンズ”と共に挑むことになるのが、大ボケ山の宇宙遊園地を経営している宇宙人たち。バッグス・バニーらの“イカレ具合”に目を付け、彼らを見世物にする魂胆です。禁じ手を使って、NBAプレイヤー並みのパワーを得た宇宙人たちに、ジョーダンたちはどう立ち向かうのか。クライマックスとなる試合シーンは、超イカれています。それもそのはず。試合会場となっているのが、ルーニー(イカれた)なアニメの世界なんですから。
“秘密のドリンク”でドーピングをキメるだけでなく、試合中にはバイクを乗り回し、銃を乱射。ダイナマイトも使用して、観客として来ていた牛を乱入させる――正気の沙汰ではありませんが、勿論アニメの世界なのでオールOK! 現実世界では完全アウト(リアルにやったら死人が出ます)なトリックプレイばかりですが、この“何でもあり”感が非常に痛快なんです。87分という尺の短さも◎。
余談:チャールズ・バークレー、パトリック・ユーイング、マグシー・ボーグス、ラリー・ジョンソン、ショーン・ブラッドリー、ラリー・バードらが“本人”役で出演している点も「ifの物語」として機能しているポイント。ちょっとぎこちない演技はご愛嬌。