「違和感を愉しむ」シンプルメン にゃあごろさんの映画レビュー(感想・評価)
違和感を愉しむ
クセというか、こだわりというかを殆ど感じさせない前半。青を基調とした綺麗な色使いが好きでした。ヒロイン紛いの子も仕草立ち居振る舞いが素敵でしたが、そんなミスリードも敢えてやっているようで、興味深かった。惑わしが多い。思わせ振りな奴が多い。違和感が多い。どれも極力主張を抑えるかのようにクサいセリフを読んでいます。
「何て静けさだ!」このセリフから。静けさ、、何でしょう。観客目線からの心情を汲みしたかのようなスイッチの切り替えにも思えます。一貫した一方的で直線的な演出に、突然入るダンスシーン。歌詞での描写はわかるものの、ぎこちない動き、噛み合わない会話、脈絡のない跳躍には驚きます。振り付けも妙だし、本音吐露吐露だし。全く噛み合わない討論では、それぞれが的確な意見を言っているが会話は成り立たない。時々、思い出したかのように、「観客は?」といった質問が投げかけられる。「観客は観客のままだ。」 これが私たちへのメッセージか。大衆映画を消費する我々観客への意見具申なのか。なんともインディーズらしくまっすぐな速球を投げかける。
コミュニケーションの難しさもひとつのテーマになっているかもですね。裏切られ振られる兄貴、内気な弟、兄貴に銃を渡され誤認逮捕されるバイクの兄ちゃん、聖母マリアのペンダントを取り合う尼さんと警官、イタリア娘を落とそうとフランス語を学ぶガソスタのあんちゃん、ニヒリストな警官、元夫等これまでの人間関係で不信な女、兄弟の親父で活動家のじいさんにお熱な若い女(おまけにルーマニア人)、家庭を顧みず過激な活動に専念する親父。
劇中違和感だらけなんですね。制作側と観客側の齟齬。
でも違和感の出所とその出口は「だって楽しいから」に集約されてしまう。皆んな適当なんだもの。
そんな難しいコミュニケーションにも明るく向き合おうという姿勢が垣間見れたかもしれません。