「【汚れた金を”拾ってしまった”兄弟と友人が人生を狂わされて行く様を描いた作品。貧しくとも善性溢れる主人公の弟が良心の呵責に耐え兼ね、ラストシーンで兄に言った言葉は忘れ難い作品である。】」シンプル・プラン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【汚れた金を”拾ってしまった”兄弟と友人が人生を狂わされて行く様を描いた作品。貧しくとも善性溢れる主人公の弟が良心の呵責に耐え兼ね、ラストシーンで兄に言った言葉は忘れ難い作品である。】
■小さな田舎町で妊娠中の妻サラ(ブリジット・フォンダ)と慎ましく暮らしていた会計士ハンク(ビル・パクストン)は、ある日兄のジェイコブ(ビリー・ボブ・ソーントン)とルー(ブレント・ブリスコー)と共に、森に墜落した自家用機の中から440万ドルもの現金を発見する。
その金を自分たちのものにしようと考えたハンクたちは、あるシンプルな計画を実行に移す。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・それまで、平穏に暮らしていた人たちが、汚れた大金を”拾った”為に、人生が狂って行く様を、サム・ライミが見事に映像化した作品である。
・まともに働いているのはハンクのみで、父の死の後、細々と暮らしているジェイコブ(だが、この男が劇中では最も人間の善性を持っている事が映される。)と酒飲みで借金だらけのルー。
・440万ドルの現金を、上から目線で自分が主導で、隠すハンク。
ー 彼は自覚無き、兄とルーへの優越感を持っている。妻もおり、子供も生まれたばかりである。更に、彼らの行動を怪しんだドワイトを事故に見せかけて殺してしまうのである。-
・ルーは金が入る事を当てにし、自堕落な生活を送るが困窮極まり、ハンクに分け前をよこす様にライフルを構えて威嚇するシーン。
ー 2階から降りて来た妻は、ハンクに対し発砲した夫に仰天し、その間にジェイコブがルーを撃ち殺す。妻はハンクに対し、台所で拳銃を向けるがハンクは彼女をライフルで撃ち殺し、夫婦間での諍いが起こっと見せかける偽装工作をする。ー
■この頃から、ジェイコブは良心の呵責に苦しむようになり、酒浸りの日々を送るが、ハンクは妻サラの的確な助言もあり、ギリギリ平常心を持って過ごす。
印象的なのは、サラが全てを理解した上で、何もない町を出るために、夫を叱咤激励する姿である。そして、彼女は頭も切れるのである。-
・ある日、”FBI"のバクスター(ゲイリー・コール)が保安官カール(チェルシー・ロス)の元にやって来る。
ー 実は、この男が令嬢を誘拐して殺害し、440万ドルを手に入れた兄弟の一人なのだが、サラはそれを新聞で察知し、ハンクに”一緒に行っては駄目!”と連絡し、更にジェイコブに観連絡をするのである。-
<雪の中のラストシーンは壮絶だが、印象的だ。バクスターは背後からカールを撃ち殺しハンクも殺そうとするが、そこに現れたジェイコブは、バクスターを撃ち殺す。
だが、彼は”もう、自首する。耐えられない。俺を背後から撃って良いよ。”と言ってハンクに背を向けるのである。
ハンクは躊躇しつつも、ジェイコブを撃ち殺すのである。
だが、シニカルなのは別のFBI捜査官が”多くのドル札の通し番号は控えてある。犯人が金を使えば、そこで犯人は捕まるのだ。”とハンクに言うシーンである。
そして、ハンクはサラの制止を振り切って、総ての札を暖炉で燃やして行くのである。
今作は、汚れた大金を”拾った”人たちが人生を狂わされて行く様を、雪深い背景の中描いた逸品なのである。>