「ソビエトが世界の不良少年だった時代の映画」人生案内 コーヒービートさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 ソビエトが世界の不良少年だった時代の映画

2025年10月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

楽しい

1931年製作のソ連邦初のトーキー映画です。

革命の混乱のなか街をたむろしていて、
悪さをしていた孤児たちが郊外の修道院跡に集められ
物つくりの仕事を初めて更生していく物語と書けば
社会主義リアリズム的プロパガンダを連想しますが
まだスターリニズムが徹底する前なので、
胡散臭さはなく、素直に面白い。

画像処理はサイレント時代を引き継いでおり
少年たちのリーダー、ムスタファが殺され
機関車の先頭に載せられ、工場への軽便鉄道の開業式に
現れるシーンでは鳴り響く「インターナショナル」も止めてしまう
という大変印象的なシーンをはじめとして
悪さを働いていたムスタファを捕まえたときの警官たちの
「またコイツか!」という悪意のない笑い顔、
少年たちを誘惑する悪所の描写や、殺害シーンなど
ワンシーン・ワンカットが大変有機的につながっている

ソビエトそのものが「世界の不良少年」だった時代だからこそ
描けた秀作かもしれない。

上映は六本木WAVEにあった「シネ・ヴィヴァン六本木」
六本木ヒルズの再開発に伴い、WAVEとともに無くなったのは残念。
元共産党員で「親ソ」だった堤清二氏が統帥だったからこそ
わざわざニュープリント上映がなされたのかもしれない。
(1986年4月鑑賞)
DVDが出ています。

コーヒービート