劇場公開日 1951年11月23日

「これもまた小さいモニターで見てはいけない」白い恐怖 KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 これもまた小さいモニターで見てはいけない

2025年12月10日
PCから投稿

そもそも映画というものは小さな画面で観るべきではない。なぜなら、映画的カメラワークによる心理効果がほぼ失われてしまうからだ。例えば、モノを小く映し続け、突然大きなものがドーンと画面に現れる──その落差が与える心理的衝撃こそが映画表現の基盤にある。しかし画面が小さいと、その効果は完全に削がれてしまう。
映画館でも「後ろの席のほうが見やすい」と考える人がいるが、私はおすすめしない。それではテレビの小さな画面で観るのと変わらない。本作の魅力は“画面の大きさ”があって初めて成立するからだ。

特に『白い恐怖』は、小さなモニターで観てしまうと ダリの奇妙で超現実的なビジュアル表現 の魅力がまるで出ない。ヒッチコックは、同じサスペンスを繰り返しているように見えて、実は一本一本の作品で異なる“実験”をしている。では、本作における最大の実験とは何か?
それは サルバドール・ダリの超現実的なイメージを、映画の中で最大限に生かすこと である。
あの悪夢シーンに登場する、鋭角的な風景、巨大な目、溶けるような影──すべてが「画面の大きさ」によって心理効果が変わるよう精密に計算されている。
ダリの絵画の面白さは“サイズ感による圧迫と違和感”にある。それと同じことを映画で実現しようとしたのがこの作品だ。
だからこそ、小さなモニターで観てはいけない。
ダリの夢の世界は縮小されると魅力のほとんどが消えてしまう。

画面の横幅は自分の身長より大きいほうが望ましいし、できれば縦幅も身長より大きいほうがいい。それほど 本作は“画面サイズそのものを設計に組み込んだ映画” なのだ。
君が今は小さなモニターしか持っていないのなら、ぜひ大きい画面を手に入れるまでこの映画を取っておくことをおすすめする。

KIDOLOHKEN
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