「4Kレストア版(解説付)を鑑賞しました」ジョニーは戦場へ行った オパーリンブルーさんの映画レビュー(感想・評価)
4Kレストア版(解説付)を鑑賞しました
戦後80年の節目の4Kレストア版再上映を、角川シネマ有楽町にて、映画評論家・町山智浩さん、松崎健夫さんの解説付きで鑑賞
①WWIの両手両足欠損のカナダ人兵士を英国皇太子が慰問して額にキスしたという逸話を元に、1939年にダルトン・トランボが書いた小説を、著者本人が1971年に映画化した本作。1939年はアメリカがWWIIに参戦するかが争点になっていた頃、そして映画化した1972年はベトナム戦争中という、後から俯瞰するとタイムリーな製作タイミングとも言える
…とはいえど監督はそこまでの反戦思想は無かったのではないか、というお二人の評価
②ジョニーの記憶と妄想(カラー映像)、現実(モノクロ映像)が、混沌としたまま行き来する筋立て。原作は全て一人称で、読者の読み解く力を必要とするが、映画ではその点は明瞭なので、観ていてもそう難しくはなかった
小説だと冒頭は傷の痛みで半ば狂気に、段々と論理的思考をしはじめ、正気になればなるほど自らの残酷な運命を思い知らされる筋立てになっているそう
③妄想シーンでドナルド・サザーランドがキリスト役で数度登場する。キリストは新兵らと賭博に興じていたり、戦地に向かう汽車で雄叫びを上げたり、大工として地味にコツコツと十字架を作っている(笑)。妄想の中でキリスト教徒であるジョニーが自分の命運を問うが、キリストにすら匙を投げられてしまう
④ジョニーを演じたティモシー・ボトムズは若手ハリウッドスターとして注目株で、この映画公開当初は恋愛戦争映画として公開されたらしい…。ロビーに公開当時のポスター置いてあったが、確かにヒロインと別れの駅で抱き合う図柄で、これを期待して観に行った客は鬱になっただろうと推察
確かに、どこから見てもアメリカの片田舎の純朴な青年で、よくある戦争映画に出てくるような血気盛んなタイプではない。そんな青年に信じられないような不運が訪れるのだから、鬱映画の誉れ高い作品である
【感想】
ラストに「国のための死は名誉であり、華美である」というメッセージが、わざわざ皮肉的に出る
日本では初めは恋愛戦争映画として公開されたが、ベトナム反戦運動の機運と共に、反戦映画として捉えられて今日に至る
反戦映画という面もあるが、尊厳死というものをどうとらえるか、問いかけているように感じた
自殺を固く禁じられているキリスト信者である彼ですら、それを切望してしまうほどの絶望的な肉体のなかに、鋭利な知能を持ちながら封じられててしまう、終わりなき悲劇に自ら幕をおろせないとは…!
癌末期の壮絶な痛み、身体が動かせなくなる病など、患者自らが尊厳とともにその生を終わらせたいと願うことを、そのつらさを感じぬ他人が禁じることは果たしてできるだろうか?
