「片思い」ジョージア デブリさんの映画レビュー(感想・評価)
片思い
カントリー歌手として大成功して、私生活では優しい夫とかわいい子どもたちがいるジョージアと、その妹でやはり歌手を志すも芽が出ず、アルコールや薬物に依存しているセイディの愛憎劇。
セイディ役のジェニファー・ジェイソン・リーの熱演が胸を引っかいてくる。全身全霊だけど独りよがりで聞き苦しいセイディの歌が長尺で流れるシーンは、歌っている本人と観客の温度差が開く一方で、こっちまで寂しく胸苦しくなった。
ジョージア役のメア・ウィニンガムは歌声がとても聞き心地がよくて、劇中のセイディと好対照の歌い方ができる人で、顔立ちもパーツが小作りで派手でなく、演技が確かで、ナイスキャスティング。
セイディが内臓をぶちまけるようにして歌っているところに、大スターのジョージアがギターとコーラスで助けに入るシーン、普通はそこで感動的な感じにまとまるんだろうけど、この映画ではむしろ逆。姉は熱唱に寄り添ったのではなく、場に収拾をつけたい、妹に恥をさらしてほしくないという考えでやったことで、妹もまたそれを見抜いている、という深くて暗い心の溝に迫るシーンになっていて、脚本がすごい。セイディはずっとジョージアに片思い。最後ちょっと救われた感じに終わってくれるのでほっとするけど、まあでも片思い。
別にものすごくひどい悪意にさらされたりひどい目に遭わされたりしたわけじゃなくても、愛した人に愛されないとか、やりたいことがあるけど才能がないとか、才能がまるっきりないでもないけど自分が思うほどではないとか、そういうギャップってすごく人を苦しめるものだなと思う。
これがジェニファー・ジェイソン・リーの家族に実際に起きたことを基にしていて、脚本を書いたのがジェニファーの母親だっていうのを知って、彼女らの強さとしなやかさにも感銘を受ける。
面白い映画だった。「サム・フリークスvol.12」ありがとうございます。