「ディートリッヒ演ずる高級娼婦に垣間見える一途な純情にも思える様な愛」上海特急 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
ディートリッヒ演ずる高級娼婦に垣間見える一途な純情にも思える様な愛
昔、モロッコ (1930) 及び間諜X (1931) をNHKで見て、その古さを超越した映画としての出来の良さに驚愕させられた。その監督ジョセフ・フォン・スタンバーグと主演マレーネ・ディートリッヒのコンビによる1932年の映画ということで、大きな期待を持って視聴。見事にそれに応えてくれるものであった。
何と言っても、ディートリッヒの悪女的な妖艶な美しさが圧倒的。そして、かつて恋愛関係に有り今も愛する英国軍医の無事を一途に願い、神に祈りを捧げるその敬虔な姿とのギャップの大きさに気持ちを揺さぶられてしまう。祈る手のクローズアップ映像により、神に真摯に祈りを捧げる人間に本当の悪人はいないことを強く伝えている。米国がピューリタンの国であることを改めて思い出させるとともに、牧師の彼女への評価アップのストーリー展開も加わり、映画として見事な作り込みと思わされた。
舞台となる1930年代の中国、政府と革命軍が内乱状態でスパイが横行し、特急列車を走行を家畜が止める中国的時間感覚、英国人、フランス人、ドイツ人、そして中国人及び西洋人高級娼婦が同居する一等列車車内、当時の上海を象徴する様なごった煮感も大変に魅力的であった。
軍医演ずるクライブ・ブルックも上海リリー演ずるディートリッヒも、あくまで表面上はずっとクールで恋愛感情を抑えて相手に見せまいとしているのも、互いの年齢とギャップがある純情なものを感じさせて、上手い。それが、最後の上海駅の人混みの中の情熱的なキスに見事に繋がっていて、凄くお洒落。
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