「Siciliaの政治を動かした、ひとりの謎多き青年」シシリーの黒い霧 everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
Siciliaの政治を動かした、ひとりの謎多き青年
SiciliaのMontelepreを7年間支配した山賊のリーダーSalvatore Giulianoの死の謎に迫りつつ、戦後も続いたシチリア独立運動や経済的発展の遅れを、社会派ドキュメンタリーのように描いた作品です。
Giulianoは取り調べを受けた時に憲兵を殺害し、その後山へ逃げて雲隠れした青年。身代金目的の誘拐、強奪、殺人などを犯すが、村人らに分け前を与えることで、貧しい地元ではロビンフッド的英雄視されていた一面も。仲間を大勢増やし、政治家、警察、憲兵、マフィアすら無視できない存在に。
Giulianoが死んだ1950年と、その数年前の経緯が行ったり来たりします。いきなり切り替わるので最初は着いて行けませんでした。後半ようやく名前が明かされる人物達も、実は最初からチラチラ映っています。生きているGiulianoは出てこないのか?!と思っていたら、白いコートをなびかせ率いている男です。右手に例の指輪をしています。
警察と憲兵隊の区別は最後まで(・_・?)でした…。
無学の貧困層が、政治利用され、見返りの約束を反故される一方で、彼らの暗黙の結束はどうにもほどくことが出来ない…。
判決文にそれが表されています。
“法の番人による暴力の行使は許されるものではない。だがある種の供述は、暴力をもってしても導くことはできない。” (真実を述べさせる法的手段がない)
これはこの山賊一味に限らず、警察、憲兵隊、マフィアの各組織、はたまた現代の企業や団体にも通じることかと。法より所属集団に忠実な人間が増えると、真相は永遠に闇の中。Siciliaの濃霧に覆われた歴史の断片には、繰り返される社会問題が垣間見えるような気がしました。