「反政府映画」地獄の7人 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
反政府映画
1973年の終戦協定で600人近くの捕虜が解放されましたがそれでも戦闘中の行方不明者(MIA:Missing In Action)は約2500人、後に戦死とされたのが1200名、主に撃墜されたパイロットなど1300人近くが不明のまま、帰還兵などから何人かは東南アジアの強制収容所に拘束されていると言う説が流れました、政府は資金調達で麻薬密売に関わった事を隠ぺいするために交渉に消極的との陰謀論まで出ましたが後に上院特別調査委員会が確証が得られなかったとして打ち切っています。
真贋の程は分かりませんが多くの国民の関心事だったことは確かで80年代はJCポロックの小説「ミッションMIA(1982)」を皮切りに、本作(1983)、「地獄のヒーロー(1984)」、「ランボー/怒りの脱出(1985)」と捕虜の救出、奪還ものが多くが作られました。
7人というところは黒澤作品を連想させますが原題は「並外れた勇気」です、よくある傭兵やスペシャリストを集めたのではなく、息子の元戦友たちに協力を懇願するのですから酷な話です。
テッド・コッチェフ監督は「ランボー(1982)」も撮っていますのでベトナム後遺症に悩む軍人心理は良く理解していたのでしょう、戦闘場面はそれなりに見応えがありましたが反政府ものなので撮影に軍の協力は得られず、軍用ヘリコプターも自前で民間機を調達し塗りなおしたとか、従って凄いと言う程ではありません。
終戦から10年も経っているので体力訓練からやり直し、秘策があるのかと思えば武力での奪還ですから分が悪い、まして頼みの近代装備まで失って強行というのは映画ならではの無謀さです。
捕虜の生存が証明されれば政府も動かざるを得ないでしょうから作戦練り直しというプロットもあったでしょうに、ローズ大佐(ジーン・ハックマン)やマグレガー(ロバート・スタック)の止むに止まれぬ父親の情の暴走は分からぬではありませんが、仲間や現地案内人の父、娘の犠牲とて軽くはありませんので後味は今一つ、負傷したマグレガーの息子の生存、ベトコンが捕虜に治療?、作りすぎ、無理筋の映画かなという印象でした。