サバイビング ピカソのレビュー・感想・評価
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天才の「支配力」と「束縛」
ピカソには 第一夫人オルガと結婚する前に2~4人、結婚後に 5人(オルガを入れて)女性がいたといわれ、映画は結婚後の彼の生活振りを描いている
話は 唯一 ピカソの毒気を振り払ったと言われる愛人、フランソワーズ・ジロー の眼を通して 語られる
各々、モデルになり 画家にインスピレーションを与え、作品の中に「永遠の命」を授かる訳だが、実生活では病むに等しい
彼女達の中で 才能があり、ピカソからの自立が出来そうだったのが マン・レイの助手だったドラ(ジュリアン・ムーア)と主人公フランソワーズだろう
ドラが 情緒不安定になり(「泣く女」のモデル) 才能を枯らし、貧困の中で亡くなったらしいのは哀しい
フランソワーズの自立を 誉めてあげたい
彼女を演じた、ナターシャ・マケルホーンが 美しく、賢明な、自立を試みる女性を好演している
「おばあちゃんの言う通り」になってしまった訳だが、その おばあちゃんを演じる ジョーン・ブロウライト(亡きオリビエ夫人)が 味わい深い
また こういう役は大得意の ホプキンスが違和感なく、ピカソを演じている
なお、映画では触れないが オルガ(精神を病んだ末、病死)、マリー(自殺)、ジャックリーヌ(ピストル自殺)も大変なことに!
ピカソが冷酷なこともあるが、天才の束縛からの解放とその作品に、魂を持っていかれてしまった感がある
アイボリー監督作品らしく 美しい画面で フランソワーズの自立が語られるが、私は その他の女性らの惨状に茫然!
フランソワーズだけが 経験を糧とし、その後 大成功をおさめている
( ピカソの嫌がらせはあるが、暴露本で応酬、大勝利を収め 才能も開花させた!この闘魂は 厳しい父親の教育の賜物かな)
恋愛が対等のものではなくなり、盲従を期待されるあたり、自分の価値を熟知し、最大限に利用する男の 狡さと天才性をも、感じる
カーンワイラー(美術史上 重要な画商)、クーツ(米画商)、サバルテス(友人で秘書、後のピカソ美術館館長)なども 顔を見せる
なお、映画には 出て来ないが、ユダヤ人画商 ポール・ローゼンバーグは ピカソの代理人となり、巨万の富を得た
ナチスの台頭と共に、アメリカに亡命し ニューヨークで、大画商の道を歩む
彼のサバイブと ナチスに略奪されたユダヤ人画商らの所有品の行方(美術界でのブラックボックス)も興味をそそられる
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