「豊かな時代の喪失感」再会の街 ブライトライツ・ビッグシティ バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 豊かな時代の喪失感

2025年6月8日
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鑑賞方法:その他

知的

斬新

癒される

当時ブレット・イーストン・エリスなどと並びニュー・ロスト・ジェネレーション(あらかじめ失われた世代)と呼ばれていたジェイ・マキナニーのベストセラー小説『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』(1984年刊行。日本では1988年に出版)の映画化。大学生の時にレンタルビデオで観た。なぜこれを借りようとしたのか今となってはもうよく覚えてないが、多分ビデオパッケージのデザインがかっこよかったのと主演がマイケル・J・フォックスだったからなんじゃないかと思う。

そんな何の気なしに借りた映画にハマりにハマって金のない学生の身でありながら何度もビデオを借りた挙げ句、卒業後は低価格再発売ビデオを買って何十回と観ることになった(当時は少なくとも週一ペースで観てたと思う)。何がそんなに自分の心を捕らえたのか自分でも上手く説明できないが、80年代バブル景気アメリカの影で心に喪失感を抱えた主人公に激しく共感したのかもしれない。いや、共感というより共振とか同化とでも言ったほうが近いだろうか。空前の繁栄を誇ったバブルの時代だからこそ、あり余る物と金に囲まれても心は決して満たされないということが逆に意識され得たあの頃。物質的貧困に苦しむ今では豊かさの中の孤独というものはかえってよくわからないかもしれない。原作小説も買ってむさぼるように読んだな。

しかしこの映画、日本ではなぜか未だにVHS&LD化のみでDVD化されていない。配信もされていないから、今では観る手段は非常に限られている。本国ではDVD化はもちろん、Blu-ray化もされているのだが。結局、米国版Blu-rayをアマゾンで買ってしまった。日本版VHSを何度も観てるんで台詞もなんとなく大意は記憶してて、字幕無しでもそれなりに観れてしまう。映像ももちろんVHSよりずっとクリア。でもやっぱりできれば日本語字幕版で観たい。

バラージ