イグアナの夜のレビュー・感想・評価
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観たかった度◎鑑賞後の満足度◎ メキシコを舞台に『性』と『精神疾患』というテネシー・ウィリアムズならではのテーマを暗喩として大人のドラマが繰り広げられる。デボラ・カーの好演が光る。
①元々舞台劇なうえ、普通、人は日常的にはあんな哲学的・思索的な会話はしないから、特に後半は舞台臭さが払拭出来ないが、それでも含蓄と暗喩に満ちた台詞の遣り取りに良質な大人のドラマを観た思いがする。
②前半は『性』ような「抑圧」「解放」「誘惑」「抵抗」がかなり明けっ広げにユーモラスに綴られる。
それが後半は「暗喩」に留まり、代わって人間の『精神』ようなの「抑圧」「爆発」「沈降」「自由」にテーマが移行していく。
③冒頭の日曜ミサのシーン、牧師にしては男臭いリチャード・バートンが説法を始めるや否やぶちきれて聴衆を罵倒・愚弄し始める。“どうしたらオッサン?”という感じだが、その原因は追々明かされる。
④
21世紀の現代の日本にこそ、本作のテーマは切実なものだと思います
イグアナとは、地べたを這いずり回るだけの存在
神の目から見れば、人間もまたおなじです
綱でくくられたイグアナを解き放った夜
それは神に変わってイグアナという被造物を解き放ったということなのです
本作のテーマは錯乱したリチャード・バートンが演じる主人公シャノンがハンモックに縛られて寝かされ、デボラ・カーが演じるアラフォーの女ハンナとの会話にあります
主人公は信じられるものを見失い、精神が漂流し続けています
正気を保つためには酒に逃げるか暴れるほかないのです
ハンナは家を持てといいます
それはレンガや木材や石の建物でも、場所ですらなく
人と人を隔てる壁を破り互いに助けあうことで持つことができる、互いの信頼の中にある巣だといいます
自分の心が憩える場、心が人間らしく生きて行くことができる場のことだと
だから、独りの部屋をでて互いに一夜だけのものでよいから交わりを持てと
それは肉体的な交わりでなく、精神的な安らぎを得る関係だと
21世紀の現代の日本にこそ、本作のテーマは切実なものだと思います
あなた自身の手でイグアナのように縛り付けられた自己の精神的の孤独を解き放つイグアナの夜が必要なのでは無いでしょうか?
それは決して一夜だけの男女の関係のことではありません
ほんのかすかにでも心が触れ合う瞬間があれば事足りるのです
そんな夜を求めて行くべきなのです
それがイグアナを繋ぐロープを切る事になるのです
とにかく名優達による火の出るような名演合戦が見ものです
リチャード・バートンの病んだ目の姿
デボラ・カーの不思議ちゃん的雰囲気と高貴さ
エヴァ・ガードナーのおきゃんな外面の内に秘めた女心
スー・リオンの天然な奔放さ
どれもこれも本当に見事です
撮影も美しく、二人のビーチボーイの鳴らすマラカスのリズムもメキシコの怠惰に麻痺していく精神をよく表現した演出であったと思います
職人的監督だと思っていましたが、このような芸術的ともいえる作品も撮れるジョン・ヒューストン監督の才能の豊さに改めて感じ入りました
難解
マキシーンの宿の二人の男は常にマラカスを鳴らしている。元々コメディのような設定なので、ついつい笑ってしまう。宿代を踏み倒そうとする98歳の詩人と連れの女性も登場し、わけがわからない展開になる。
誘惑を断ち切るために割れたガラスの上を裸足で歩くシャノン。クビを宣告されたためぶちきれて、「中国まで泳ぐ」と。なんだか後半の展開が全く不思議。ジェラルクと神について語り、じいさんは詩を完成させる。女主人は男二人と海でたわむれる。イグアナだけが繋がれて不自由な生活。俳優の演技だけが光っていて、ストーリーにはついて行けなかった。
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