群盗荒野を裂くのレビュー・感想・評価
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いつの世も政府が貧乏人を作る
オープニングは革命軍らしき若者たちが銃殺されるシーンだ。メキシコは嫌いだと言うビルは列車に乗り込むが、小高い山の間に伸びる線路に将校らしき人間がカカシのように張りつけられていた。そこでチュンチョのゲリラ部隊が襲撃。張りつけられていたのは大尉だったため、兵士たちは躊躇して防戦一方。しかし、ビルが機関士を殺して完全に列車を止めたおかげで強奪に成功。自ら手錠をしてお尋ね者のように見せかけ、ビルはうまく仲間に入ることになった。しかし、列車にあった銃だけでは数が足りない。ビルの機転で次々と兵舎や牢獄を襲撃することに成功する・・・彼らの目的はエリアスの革命軍に武器・弾薬を売るためだった。
サン・ミゲルの村に到着してから彼らの仲に亀裂が入る。エリアス将軍に武器を売って金儲けをしたいチームと、村に残って政府軍の報復から守ろうとするチュンチョと彼の弟サントだ。貧乏人を解放するのが目的であるチュンチョはすでに誉れ高い革命家のように思えるところだ。そして、マシンガンを奪われたことに気づき、チュンチョは先を行くチームを追いかける。
途中、エリアスの使者が訪れるが、使者は政府軍に追われていた。そこで銃撃戦となり、政府軍もチュンチョの仲間もほとんど死んでしまう。残った者はチュンチョとビル、そして紅一点のアデリート。しかし、アデリートは恋人ペピートが死んでしまったためその場に残った(かどうかわからない)。なんとかエリアス将軍の砦にたどり着き、武器を売って金をもらうことになったチュンチョ。しかし、到着する前、サン・ミゲルの村が政府軍に襲撃され全員が虐殺されたと知らされる。伝えたのはサントだった。チュンチョは村を守ろうとしていたのに、ビリーたちを追いかけたためだ。しかも武器のほとんどは売るために持ち出していたし・・・。そしてチュンチョの射殺命令が下され、サントがそれを執行しようとしていた。が、ビリーはエリアスを金の銃弾で撃ち殺していた。
ビリーの目的が最後までわからないようにするという設定の面白さ。でも、アメリカ人だということで察しはつく。そして報酬が彼らのやりとりとはほど遠いほどの金額だったのだ。チュンチョもビリーもお互いに深い友情を感じてはいたが、最後にその報酬を分け、一緒にアメリカへと向かう段になって、チュンチョはビリーを撃ち殺した。
文字の読み書きもできない貧乏なメキシコ人。チュンチョも例外ではなかったし、口下手で説明も上手くできないところがミソ。元々は革命家でもない彼だが、革命家のエリアスを尊敬していて、貧乏人を作った政府を憎む。だが、革命が何たるかも説明できないのだ。それが最後に落とした金貨を少年が拾ったのを見て「パンを買うんじゃない。ダイナマイトを買え」に繋がってゆく。世の中に対して憤りを感じるものの、それを暴力でしか表現できない無骨な人間。そして情にもろいという日本人にも馴染み易いキャラクターだった。ただ、現代感覚からすると、人を殺し過ぎ。冷徹なビリーはともかく仲間でさえついつい殺しちゃうところに共感できない。
ともあれ、金が全てだというアメリカ人を皮肉った内容や、ちょっとカルトなストーリー展開はかなり後を引く。殺す者、殺される者の不条理な点も、幼い頃に観ていたらトラウマになったであろう内容はインパクト大。
無法者の生き方の描き方がよかったが、最後の演出が駄目
総合70点 ( ストーリー:75点|キャスト:70点|演出:65点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
途中までは良かった。正体不明だが怪しい行動をとる謎のアメリカ人のビルがいて、盗賊の首領のメキシコ人のチュンチョがいる。政情不安のメキシコを舞台にして、そこで金を求めると同時に、貧乏人の生活を知って国家のあり方にちょっとした理想をもつ盗賊の生き様の描き方と演技がなかなかに面白い。なんのかんのいってもまともな教育もなく戦略も描けないチュンチョは、結局自分はみんなのために何かをしたいのかそれとも自分のために何をしたいのかわかっていない。彼が行き当たりばったりで適当な行動をとっていくうちに物語は大きな展開を迎える。西部劇だが大きな陰謀があったり悪者とされる人々の生き方や価値観があったりするのがいい。
だが最後の場面が気に入らない。いきなりチュンチョが「好きだが殺さなければならない」みたいなことを言って、ビルはなぜ逃げもしないし抵抗もしないのか。仮にも彼は職業的殺し屋なのだから、こんなにのんびりと「なぜ殺すのか」などと理由を相手に問いただす質問を馬鹿みたいに繰り返している場合じゃないだろう。この最後の演出が白けてしまった。それがなければもっと楽しめたのに惜しい。
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