「愛が必要な映画だった。」クリーン、シェーブン smderさんの映画レビュー(感想・評価)
愛が必要な映画だった。
これは愛情飢餓感の映画だなと思った。
抑圧の中育った母親に歪んだ愛情で育てられた主人公の男は「幸せ」に脅迫的な執着をみせている。これは私の予測でしかないが母親は子供よりも旦那をとる女で、子供に無関心。ピーターの頭で響く男の声は彼の中で作られた幻の父親のようなものだと思う。絶対的な存在で彼を支配して迫ってくる。統失患者にありがちな見張られている感覚や被害妄想が体内に送信機受信機を埋め込まれたという想定を生み出している。これは幸せでない状態を受け入れるため、なれない理由である障害を自ら創り出しているからだと思う。そんな中でも彼の妻との出会いや娘の存在は命綱のようなものだったのではないから。妻の死因は語られていないが、きっと自殺なんじゃないかと思った。この世界では多少、図太く強引な方が上手く立ち回るもので、捜査中の刑事も、あの子には父親が必要だ〜とか綺麗事をぬかしながら味方になることをだしにして初対面のシングルマザーと肉体関係を持ち、暴漢には屈して野放しにして、精神病患者を犯罪者と決め込み憎んで追い回して殺す。正常と異常とは?
トラウマから来る弱さと優しさが生きづらさを産むこの世の絶望的な一面が、映画全体の抑圧的なトーンと合わさってやるせなくて涙が出た。
死ぬ事が救いの世界なんて嫌だ。
色々な事に対応をせざる負えない娘の顔が終始不機嫌そうなのが世の中への反抗のようで共感と応援したい気持ちになった。いつか笑える日が来るんだろうか。
何か一歩違えば幸せな結末も迎えられたはず。自分次第と悟った男に母親が笑顔のひとつでも見せたら変わったのかもしれない、死んでから悲しんでも遅いのに。
コロナや不景気で絶望臭漂う今
悲劇を産まないために肯定や優しさの重要性どんどん高まってるなと思う