「俺はあんな稼ぎ方はしたくない、何かいいことをしたい」キング・オブ・ニューヨーク とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
俺はあんな稼ぎ方はしたくない、何かいいことをしたい
それには永遠に逃げ果せる必要はない、せめて1年…。暗闇の中、荒廃し病床と化したNYという大都市もまた本作の重要な登場人物である。その摩天楼を背に、また見ては彼は何を思うのか?象徴としての地下鉄。
冷たい目でこの腐敗した世界と対峙するフランク・ホワイトは、映画史に残るアイコニックなキャラクターで、真のカリスマだ!単一カットの中で真顔から、悪魔のように魅力的な笑顔へと自然と流れていく顔の寄りカットが強すぎる、圧倒的な強度!そして、ダンスもMV「Weapon of Choice」ばりにキッレキレ。
「プラザ・ホテルに来い」俺はフランクだ。彼こそ永遠に俺たちのキング・オブ・ニューヨークだ!釈放された元囚人から"ニューヨークのキング"、そして名士へと…。見るものを惹きつける圧倒的なカリスマ性を遺憾無く発揮する名優クリストファー・ウォーケンの、名優が名優たる所以をまざまざと見せつけられているようで、彼の目から視線が離せない!
単なる、罪滅ぼしか自己満か?目的が正しければ手段は肯定されるのだろうか?警察権力や政治家など、世の中を良くするために存在する人々や組織は枠組みの中で詭弁ばかり述べては機能不全に陥ったように、この窮地・瀕死の状態に一体何をしているのだろうか?そんなしがらみを抱えた社会の中で、本当の意味で正義を果たすには、ある種の自警団のように法制度を超越するしかないのか?
主人公サイドと警察(特に部下・若手陣)サイド双方・両サイド共に"極端"な描かれ方はしていて、実際より良い世界を実現するためにはその中間というか、主人公の心意気や理想、目指す姿を合法的に叶える必要があるが、それでもやはり自分としてはフランクの言いたいことがわかってしまうのだ。目的のために手段を肯定することなく。例えば彼のやり方は自分の目的のためには、それを叶える邪魔となる人間(警察)を躊躇なく殺すし、ドラッグだけはOKとしつつ、実際問題ドラッグこそ彼が救おうとしていた貧困地域などを蝕む根深い原因であることを無視している。人生の半分を刑務所で過ごした自分が扱わなくても一大ビジネスなドラッグは、大海に小石一つ投げ込む程度の"我関せず"なスタンス。
『吸血鬼ノスフェラトゥ』に『フランケンシュタイン』、ホラー映画の古典。他人を食い物に、後ろ暗いことをしてカネを稼いでいるクズどもは、どいつもこいつも揃ってブランクを恐れろ!これは胸を張って映画館で観て正解だったと言いたい。彼のやり方はもちろん褒められたものでなく、決して容認できるものではないけど、グレー(というかブラック)な方法でクズどもを一掃し、世の中を正そうするさまは自警団的であり、あとは『孤狼の血』"ガミさん"役所広司なんかも少し思い出した。
ビショップ警部は、白人版サマセット(『セブン』)だ!アイルランド系に黒人、刑務所にしても同性愛っぽさも?そんな若手どもを束ねる"黒人みたいな髪型をした"(?)ビショップは、どこかできっと挫折も味わってきたのだろう、現実に敗れ、諦め苦悩しながらも若い者たちを気にかけ愛情を覚えることで目覚める。ソーダ大好きなジャンプ役を好演するキレキレな若き日のローレンス・フィッシュバーンもまた記憶に刻まれる!ジャンカルロ・エスポジート、ウェズリー・スナイプス、スティーヴ・ブシェミ。
念願叶って遂に観られた!日本で観れない"幻の"傑作ありすぎ問題。途中物語がどういうところに向かっていくのか、またラストも読めたが、演出意図が伝わるようで全編にわたって記憶に残る名シーン・名カットありすぎだし、作中ずっと集中力切れなかった、どころか進めば進むほどにグイグイと惹き込まれ魅せられていく自分がいた。旧作ではあるものの、求心力が凄まじい劇場体験だった。もっとアベル・フェラーラ作品を観られるようにしてほしい。特に、本作の次に『アディクション』!