「「あぶり」をやる新人の頃のアル・パチーノ」哀しみの街かど こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)
「あぶり」をやる新人の頃のアル・パチーノ
「あぶりをやりました」とのクスリで捕まった有名人の供述を聞いたとき、真っ先にに思い出したのがこの映画だ。ヘロイン中毒者を描いているこの作品の中で何度も出てくるのが、ヤクを水を浸したスプーンにのせ、下からアルコールランプであぶり、それを注射器に吸い上げて体にうつ、というシーンだ。あの人もこんなことをやっていたんだろうなあ、との想像を容易にすることができる映画なのである。
それはともかく、この作品の見どころは「ゴッドファーザー」で鮮やかに登場する前のアル・パチーノが、うらぶれたヤク中の若者を見事に演じているところだ。この映画の中でアル・パチーノはクスリの魔力に一度とりつかれると、二度と離れることのできない、中毒者の思いや心の内を実に細やかな演技でスクリーン上に見せる。私は、この作品は「ゴッドファーザー」の後に見たが、「ゴッドファーザー」よりも演技そのものは上、と感じたほどだ。
名優と呼ばれる役者さんならば、演技の歴史も見てみたくなる。その意味でこの作品は、とても内容が重く、見ていて辛くなってくるのだが、アル・パシーノという名優が誕生する瞬間が見られる、貴重なものではないかと思う。
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