大いなる遺産(1946)のレビュー・感想・評価
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尻にしかれるピップ
子供時代のエステラがジーン・シモンズ、そしてピップがアンソニー・ウェイジャー。彼女の演技が一番よかったような気もする。
囚人に対する描き方はなかなかよかったし、偏見を持たない主人公の素直さにも共感できるものがある。ずっと独身を通す金持ちの女性の過去や、彼女が養女にしたエステラ。謎めいた設定であってもわかりやすい展開だ。
結局、エステラは囚人の娘であったことが判明するのだけど、女王然とした高慢な態度は変わるのだろうか。ピップへの愛情もそれほど無さそうだったし、将来を考えると、尻にしかれるピップ像が浮かんでくる・・・。
ディケンズの世界が見事に映像化されたイギリス映画の古典的ドラマツルギー
デヴィッド・リーン監督と云えば「アラビアのロレンス」のみが語り継がれているが、初期の「逢びき」や中期の「戦場にかける橋」、そして後期の「ドクトル・ジバゴ」「ライアンの娘」も名作の名に相応しい。そのリーン作品の中で個人的に最も好きな映画が、この「大いなる遺産」だ。チャールズ・ディケンズの世界観とストーリーテラーの面白さが、リーン監督の手堅く洗練された演出と個性的役者の好演、それにガイ・グリーンの素晴らしいモノクロ映像美の撮影により、完成された古典的ドラマツルギーの模範の領域にある。「ライアンの娘」の父役ジョン・ミルズが、何と若々しく主人公を演じていることか。まだ幼さが残るジーン・シモンズの早熟な少女の可愛らしさとのコントラストもいい。主人公ピップの義兄を演じるバーナード・ミルズのお人好しなところや、切れ者弁護士役の巨漢フランシス・L・サリヴァン、ピップの親友役のアレック・ギネスの頼りなさげなか細さ、そして脱獄囚のフィンレイ・カリーのかくれた善人性と、イギリス演劇の役者たちの厚みに感服するしかない。荒涼とした大地と不気味な雰囲気を醸し出す流れる雲の空を捉えた映像の冒頭からラストの大団円まで、リーン演出によるディケンズの世界を堪能できる。
さすがデヴィッド・リーン監督、ディケンズらしさが横溢
ロナルド・ニーム制作、デヴィッド・リーン監督という興味深い顔合わせのディケンズ原作映画化。
DVDがいま、入手できないのが残念な、19世紀イギリスの雰囲気溢れた、正にディケンズというべき作品。
特に、若きエステラを演じたジーン・シモンズの圧倒的な、神々しい美少女ぶりと、ハーバートを演じたアレック・ギネスの芸達者ぶり、これらだけでも優に一見以上の価値あり。
DVD復刻か、NHK-BSでの放映を期待したい逸品。
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