「じわじわボディブローのように効いてくる作品。」桜桃の味 okaoka0820さんの映画レビュー(感想・評価)
じわじわボディブローのように効いてくる作品。
じわじわボディブローのように効いてくる作品。
序盤から基本は車での会話。それが至近距離の圧迫感のある画の連続なので、結構疲れる。そして、荒涼とした大地や砂埃ばかり。おもしろくもなんともない。主人公の表情もそれらと同じく。
しかし、終盤のじいさんのあたりから変化が出始める。走っている車を遠くから撮りつつ、じいさんの話が乗っかるのだが、これが見ている側へ話しているような感覚になる。そして、映像もそれまで映さなかった空や鳥、グランドを走る人、木、夕暮れ、と開放的なものを映していく。説明もなにもないが、それが主人公の視線、心境の移ろいを表現している。
ずいぶん前に読んだのでうろ覚えだが、漱石を思い出した。死のうかと相談に来た男。話を聞き終え沈黙のあと、夜空の月を示して漱石が「あの月を見て美しいと思うか」とたずねる。男は月を見上げ「はい」と答える。漱石は言う「それでは生きていなさい」。
どういうことか、は言っていなかった。この映画もそう。でも、桜桃の味はどんなに絶望していようが美味しいと思えるだろう。じゃあ生きていたら、ていう。
でも最後はどういうこと?
コメントする