「頑張ったのにねえ。」妹の恋人 病気の犬さんの映画レビュー(感想・評価)
頑張ったのにねえ。
若かりし日のジョニーデップが主演に次ぐ俳優として出演しています。主演の二人も悪くないのですが、完全にジョニデの映画になってしまっています。
精神的に不安定な妹を支えながら懸命に生きる兄、彼らの前に一人の風変わりな男が現れて・・・ というストーリーですが、丁寧な造りと登場人物のキャラのよさから飽きが来ません。
この映画の良いところは悪を病気だけとすることで、出てくる人間は全て善人に描かれているところ。また見苦しい悲壮感が少なくてそれだけ主演に好感を持ちやすいです。全体的に非常に観やすくまとまった作品ですが、やや毒気が足りず物語の幅が狭いように感じます。全てにおいてお手軽な演出が本当に良かったのかどうか。
つまり、主人公達の障害となるものが目に見えない(見えにくい)病気というものだけなので、兄弟の闘いが見え辛く周囲の人々の優しさのほうが目立ってしまう、全体が埋没してしまい、スターだけが前面に出てしまっています。キートンの動きを真似するジョニデが素晴らしすぎて他を圧倒してしまう、しかし、物語の本筋ではないために焦点がぶれている。簡単にいうと映画つくりがあんまり巧くない。
この物語の構造の欠陥によって主演をはじめとするほかのキャストが犠牲になってしまっています。救いの無い話よりも救いのある映画のほうが好きですが、それにしてもこの真綿でくるむような善意の集中は心地よい反面で、映画に引っ掛かりが少なく自立性が薄い。
妹の成長を描いているようで本当は兄が成長して行くという、まあ、ありきたりな物語ですが、兄の描写が優しさ不器用さに終始している為に他が不十分になってしまい、むしろ観客側が一歩進んで感じ取ってあげないといけないように見えます。
ティーンの女の子向けの映画としては十分な出来といえますが、大人にはやや物足りなさが残ります。