「【揺らぐ絶対主義的価値】」田舎司祭の日記 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【揺らぐ絶対主義的価値】
司祭は、キリスト教、つまり、カトリックのメタファーだ。
二つの大戦を経て、それまでの宗教的価値は揺らぎ、司祭が問答を繰り返して揺れ動く姿や少女との交流は、カトリックが自己崩壊しつつあったことを示唆しているのだと思うし、領主や村人との軋轢や、彼らの従来の価値観へのチャレンジも崩壊の序章だったのだ。
映画「二人のローマ教皇」で、現在、ローマ・カトリックは、神父達が起こす性的虐待について、当事者を裁くことを躊躇(ためら)うばかりか、隠ぺいしようとする傾向が強く、この体質について一般社会からの批判や怒りが頂点に達し、性自認を含む新たな価値観を含む相対主義の挑戦と共に、ローマ・カトリックの土台を大きく揺さぶっているという話しがあったと思う。
これも、前段の文脈と照らし合わせると非常に類似しているように感じる。
内部崩壊と外部からの価値観へのチャレンジ。
こうしたカトリックの宗教的価値の崩壊は、この時点で既にあったのだ。
相対主義の対義語は、絶対主義だ。
絶対主義は、歴史や文化的なものに依存せず、どのような観点からも正しいとされる命題があるのだという考え方で、それこそがキリスト教の神なのだという、キリスト教の18世紀中頃の思想から始まったものだ。
その後、絶対君主制と歩調を合わせるように生きながらえてきたカトリックの絶対主義的価値は、革命や、二つの大戦を経た民主主義社会への道程のなかで、揺らぎ始め、現在に至っているのだ。
シネマトグラフという手法に触れるとともに、秘められたメッセージを考える作品ではないかと思う。
現代にも通じるメッセージで、古いとか、決して過去に追いやられるようなものではない気がする。
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