「 とにかく切ない恋愛映画」アデルの恋の物語 Garuさんの映画レビュー(感想・評価)
とにかく切ない恋愛映画
実話だということだが、現在ならストーカー行為として捕まり、即刻刑務所か病院送りである。 男だったら、相当に危ない暴力的なストーカーになるはずだ。 それが、ここまで上質の恋愛物語に仕上がったのは、トリュフォー監督のアデルユゴーという人物に対する思いの強さがあったからではないだろうか。
まず、 アデルを取り巻く登場人物たちが皆温かい。 彼女を心配しながら見守る人々と同じように、観客もまた、最後までアデルに寄り添いたくなる。 アデルの行動が極端になればなるほど、人としての同情心が否応なしに湧き上がってくるのだ。
個が確立された欧米人の創る恋愛映画には、日本の恋愛映画では決して表現され得ない強烈な切なさが出る。 ひとり精神を病んでいくアデルの物語には、特にその切なさが強く出ているように思う。
そしてなにより、当時19歳のイザベルアジャーニの恐ろしいほどの美貌! これが、時には醜いほどに憐れな行動をも魅力的に見せる。 アジャーニの美しさと可憐さもまた、物語の切なさに拍車をかけていることは間違いない。
女の業の悲しさを人々の優しさで包み込むように描いた時、自然と生きることの切なさが物語の中に染みだしてきたのではないだろうか。 トリュフォー監督作品の中でも、特に好きな一本だ。
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