「殺伐とした現実の中での突破口」赤い砂漠 雨音さんの映画レビュー(感想・評価)
殺伐とした現実の中での突破口
何となく憂鬱にさせる映画ではあった。けれど、投げかけてくれているものには深いものを感じた。
ジュリアーナはふとしたことがきっかけで、心のバランスを崩し、まわりとの違和感や不安感に囚われ、精神的に苦しむ。
その、彼女のまわりとは、映し出される工場の労働の様子、灰色の空、汚れた川。(ラヴェンナの街に一度行ったけれど、あの街にこんな側面があったとは…) そして人々の生活の仕方や内面も描写されてくるが、それらはハッキリ言ってこちらも観ていて退屈だった。そこにあるのは、金のために働く、セックスする、惰性でダラダラと遊ぶ。それだけのようにみえる。
ジュリアーナには店を開きたいという願望があった。それは、人と人とのつながりにおいてもっと素朴で手応えのあるものを感じたい、という自分の内なる欲求を、直感的に感じていたからなのだろう。
彼女は苦しんだ末、やっとひとつの手応えを掴んだ。子供だった。
子供への愛情。それが彼女にとっては、唯一、人間的で自分らしさを感じるものだったらしい。
殺伐とした現実社会において人間性を見失わないための突破口は何か?ひとつは、家族への愛情、ということになるのだろうか。
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