劇場公開日 1965年10月9日

「正しく病んでいる唯一の人」赤い砂漠 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5正しく病んでいる唯一の人

2022年5月3日
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鑑賞方法:映画館

知的

ジュリアーナは唯一、自然で豊かな髪を持っている。他の人は男女共に乱れないきちっとしたヘアスタイルだ。無機質で灰色の巨大な工場に煙突と大型船、騒音は神経に障る金属音、変な色の煙に汚い水、悪臭もするだろう。そんな中で雇う側はどんどん豊かになり、精神を病みながらも給料が良ければ自分の時間と労働力を提供する雇われる側。社会が変わる中で豊かで自然の美しい髪を持った彼女だけが恐怖と不安感を持ち悩み苦しんでいる。

どこの国も「先進国」になり豊かになり今の社会に繋がっている。そういう時代の変化の中で、自分の居場所を見つけられない、誰からも必要とされない自分に苦しんだ人が確かにいたことをこの映画は教えてくれる。

モニカ・ヴィッティの美しさは見事としか言えない。彼女がはおるコートはどれも似合っていて素敵だ。特に最初と最後のグリーンのコートは丈も袖丈も色も美しい!素敵。

talisman