劇場公開日 1968年12月31日

「オープニングでは、まさに『さらば夏の光』だったのだが…」さらば夏の光 osmtさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0オープニングでは、まさに『さらば夏の光』だったのだが…

2023年7月6日
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鑑賞方法:映画館

1時間36分。いつもなら丁度いい頃合いの上映時間のはずなのだが…
やけに長く感じた。

ヨーロッパの光と風景の中、あの鮮烈な構図のカメラワークが、どのように発揮されるのか?と期待していたのだが…

オープニングは、相変わらずカッコよく、まさに『さらば夏の光』を予感。
しかし、その後、本編で前衛性などは殆ど見られず…
カテドラルを探す旅だというのに、美しく装飾された聖堂建築も殆ど見られず…
割と凡庸なメロドラマが展開していた…

そもそも探しているカテドラルが、地味すぎ。
脚本の上では、それなりの理由はあるが、観ているコチラ側は「そんなん、知らんがな」といった台詞が一瞬あるだけ。
やはり「何故そこまで惹かれるのか?」という提示がなければ、旅それ自体の必然性も薄れ、脆弱なフィクションへ陥ってしまう。
というか、あのゴージャスな岡田茉莉子と地味なカテドラル(を探している意図と目的)を、結果リンクさせるには無理があり、破綻してる事に気付かない訳も無いだろ?と思うのだが。

岡田茉莉子の夫役の愛に関する台詞は、如何にも吉田喜重らしく面白かったが…(愛は本来、神によるもの。人間の愛はそのコピー。つまりイミテーションだから長持ちできる。とか…)
しかし、哲学的で観念的な台詞も随分と鳴りを潜めていた。

当時としては、日の丸を代表する大企業「日本航空」のPR的な映画だったこともあり、色々と忖度したか。
あるいは、日本航空から「あまり前衛的なのは、ちょっと…」と釘を刺されていたか。
ありふれたモン・サン=ミシェルも先方からのリクエストだったかもしれない。

そもそも、その日本航空から出費された製作費も限られていたらしいから、たぶんロケハンにも充分な時間はかけられず、本来の計算し尽くされた鋭利なカメラワークも難しかったのかもしれない。

岡田茉莉子じゃなかったら、だいぶキツかったと思う。
相手役の俳優もイマイチだったし。

せめてもの淡い期待として、海外ロケならではの解放感で、岡田茉莉子のフルヌードが見れるかな?なんて思ってもみたが…
全然、甘かった…
珍しく髪を下ろした腰まで伸びたロングヘアは、ちょっと良かったけどね。

osmt