「「えっ!! 全50話のTVアニメを映画2本分で!?」」∀ガンダムI 地球光 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
「えっ!! 全50話のTVアニメを映画2本分で!?」
『機動戦士ガンダム』誕生20周年の企画として、原作者である富野由悠季自らの手によって制作されたTVアニメ『∀ガンダム』(1999〜2000)を、総集編にして映画化。
前後編の2部作として制作されており、これはその前編にあたる。
「宇宙世紀」より遥か未来の地球を舞台に、「月の民」ムーンレィスと、地球にあるアメリア大陸との戦争が描かれる。
「えっ!! 全50話のTVアニメを映画2本分で!?」
「出来らあっ!」
という感じの映画。
そもそも全50話のTVアニメを、たった2本の映画に纏めるという企画そのものに無理があるんじゃないですかね?
テレビアニメ版は未鑑賞。率直な感想としては「やりたいことはわかるけど…」。
全50話のうち、1〜27話を纏めたものがこの前編らしい。
1話を25分として計算すると、27話は675分ということになる。つまり11時間15分を2時間に纏めるという荒技を成し遂げたのが本作ということになる。
こんな無茶苦茶な編集に挑戦したことに対しては凄いと思うが、映画の出来に関してはお察しの通りである。
冒頭からダイジェスト感の強い展開。
宇宙から来た主人公が、なんかよくわからんうちにお金持ちの使用人として働くようになって、よくわからんうちに月から侵略者が来て、よくわからんうちにガンダムのパイロットになる。
かつて月へと移住した人々がムーンレィスで、彼らは地球に帰還したい。そこで地球にあるアメリア大陸に国家を作ろうとするが、大陸の人々は断固拒否。そして小競り合いが起こる…。
そこまで複雑な設定ではないので、ストーリーはかろうじて追えるのだが、登場人物の説明が殆どないまま物語がどんどん進むので、全く彼らに感情移入することが出来ない。主人公以外、名前すら覚えられなかった。
ダイジェスト感の強い展開が淡々と進んでゆき、最後は核兵器の恐ろしさを提示して物語は一旦幕を下ろす。
唐突に核兵器の恐ろしさを説かれても、観客としてはポカーンとしてしまうばかりで、全く感情がノっていかない。
大塚芳忠ボイスのオッさんが死んだっぽいけど、ふーんって感じだった。というか、あのオッさんと妹のお嬢さんがいつのまにかいい感じになっていて驚いた。あの子がヒロインじゃなかったのか。
おそらく、TVアニメ版は面白いのだろう。
19世紀末〜20世紀初頭くらいのアメリカをモデルにしたのであろう世界に、突如として現れる大型二足歩行ロボット。
地球側にはロボットが無いので複葉機で対抗するという展開はなかなかにフレッシュ。
古典的なSF映画のような設定だが、やはり未知の侵略者の来襲というのは面白い。
実は主人公が月から送り込まれたムーンレィスだった、というのも面白い設定だと思う。
故郷である月と、愛着のある地球に板挟みになる主人公という構図は、この映画ではそれほど伝わってこなかったが、おそらくTVアニメ版ではもっと葛藤があったりするんだろう。
現代よりも遥かに進んだ文明がかつて存在しており、それは「黒歴史」という神話によって伝えられている、という設定もワクワクする。しかもその古代文明が、『ガンダム』シリーズでお馴染みの宇宙世紀であるというのは驚くべき発想力だと思う。
ザクなどのモビルスーツや、ホワイトベースのような宇宙戦艦が古代の遺跡に眠っており、それを甦らせることにより月の民に対抗するというのも上手い設定。
主人公ロランはこの雑なダイジェスト版でも魅力がちゃんと伝わってきた。やたらと女装しなくてはならなくなるという展開が面白い🤣
また、『ブレードランナー』などのハリウッド映画にも参加している大御所デザイナーのシド・ミードがデザインするモビルスーツは、これまでのシリーズとは一線を画している。
ヒゲの生えたガンダムは当時賛否両論だったらしいが、現代の感覚でいえば全然アリだと思う。19世紀的な世界観にもマッチしているし。
さすがに全50話は長いよなー、と思ったのでこの映画版を鑑賞したのだが、やっぱり楽しようとしちゃダメだね。
『∀ガンダム』のあらすじ紹介みたいな映画なので、ちゃんと楽しみたいのならTVアニメ版を観なければいけないようです。
※YouTubeの「ガンダムチャンネル」で配信されていたので鑑賞。BGMとセリフのバランスが悪く、なんて言っているのかよく聞き取れなかった。これはDVDだと問題ないのだろうか?