劇場公開日 2001年5月26日

「残された者たちの距離(ディスタンス)」DISTANCE ディスタンス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0残された者たちの距離(ディスタンス)

2020年1月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

難しい

是枝裕和2001年の監督作品。

4人の男女が集い、とある山中の湖へ赴く。
一見そういうアウトドア仲間のように思えるが、彼らには暗く重い共通点が。

3年前、カルト教団が起こした凄惨な事件。
彼ら4人は、その実行犯遺族。
教団によって殺され、遺灰が撒かれたこの湖を、毎年命日に訪れているのだ。

目的も終わり、帰ろうとした時、思わぬアクシデントが。乗ってきた車が盗まれた。
山中に取り残され、とても歩いて帰れる距離ではなく、日も暮れてきた。
途方に暮れていた時、一人の男と出会う。
同じくバイクを無くしたというその男の案内で、ロッジへ。
何故この男は、こんな山中にロッジがある事を知っている…?
実はロッジはかつて実行犯たちが暮らしていて、男も元信者だった…。

前2作同様、ドキュメンタリータッチの演出。
キャストも自分の台詞以外、ほとんど即興演技。
リアルな反応や感情が伝わってくる。
その難演を体現したのは、ARATA、伊勢谷友介、寺島進、夏川結衣、浅野忠信ら豪華キャスト。

こういう事件が起きた時、加害者は勿論、加害者家族も世のバッシングを浴びる。
が、これは余りにも理不尽。
加害者家族だって被害者だ。
家族、親しい者、大切な人たちが危険思想に犯されていく…。
何故、止められなかったのか。
同じくらい悩み、苦しんだ。
そして今また、過去と向き合う…。

非常に考えさせられるテーマ。
淡々と重々しく。
なかなかに分かり難く、伝わり難い作品でもある。
ラスト、ARATA演じる主人公の思わぬ人物像など、ボーッと見ていたら、どーいう事!?
クライマックス・シーンも含め、全体的に難解。
それほど、残された者たちの距離(ディスタンス)は複雑なのかもしれない。

近大