私が棄てた女のレビュー・感想・評価
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苦闘する女性たちを通じて日本の差別構造を糾弾?!
浦山桐郎監督による1969年製作の日本映画。原題:The Girl I Abandoned、配給:日活。
原作は読んでいない。ただ,キリスト教色は無く、かなり改変されていることはまあ十分に予想されるところ。
一度見ても良く分からず二度見し、現在でも通じる凄い傑作映画との印象を抱いた。主題となるものは、そう今も尚存在する、差別する者との差別される側の闘いとでも言えそうか。都会者と田舎者、金持ちとそうでない者、女性差別者と非差別者、高学歴者と低学歴の者、資本家と労働者、学生運動から要領良く転向する者とそれをずっと引きずる者、都会に染まり悪事を働く人間とそうでない人間、強者と弱者が描かれ、更に差別される側の人間として、出戻り女、障害者,年寄りが登場する。
主人公吉岡勉(河原崎長一郎)と三浦マリ子(浅岡ルリ子)は早稲田卒の学歴や金持ちの家系子女で差別する側に居た訳だが、その場所にはどうも落ち着いて居ることが出来ない。吉岡には森田ミツ(小林ミツ)を棄てた過去があり、マリ子も親の言いなりの結婚で失敗した過去が有る。無垢なミツの死を経て学びを得た2人は、差別される側に寄り添って生きていく模様。そのことが最後、マリ子が差別する者たちと闘う決意を表明することで示される。
浦山監督作を見るのは「青春の門」以来2作目。大竹しのぶの演技も凄かったが、この映画で登場する女優達の演技も素晴らしい。
小林トシ江演ずるミツは最初の方はいかにも冴えない田舎娘であるが、純真に吉岡を想う恋心には惹かれるものがあり、どんどんと美しく魅力的に見えて来る。過去映像として挿入される堕胎シーンで吉岡さーんと叫ぶ姿が痛く悲しい。後半では、戦争で片足無くした経営者が運営する老人施設に押しかけ就職し、正しく生きていく逞しさも感じさせた。
ミツの幼馴染だが、対照的に都会で売春を束ねる様になるしま子演ずる夏海千佳子の悪女ぶりも良かった。ミツの恋心を利用し、吉岡の妻三浦マリ子から金を巻き上げようと画策し、意図は無いにしろミツを死に至らしめる。悪になってしまった彼女も差別構造の犠牲者か。
そして吉岡勤める会社社長の姪ながら、金持ち生活を捨て吉岡の妻となるマリ子を演ずる浅丘ルリ子もとても良かった。叔父に頼る母の生き方への反感や結婚失敗を経て自分の生き方への疑問を感じている彼女は、新しい時代の若者への監督・脚本家の希望の象徴か。出演作も多いが、美しく気品もあり強さも備え、彼女の代表作の一つか。最後、彼女のアップで終わり、彼女の主演映画にも思えた。
一方、主演の河原崎長一郎、彼の学生運動からの友人役江守徹、部下役小沢昭一と男優が皆魅力無いのは「青春の門」と同様で、浦山監督作の特徴?まあ、その中で労働者役の加藤武はミツへの強引なキスや最後の主人公との将棋シーンで印象には残った。
脚色山内(「久豚と軍艦」等)、原作遠藤周作、企画大塚和、撮影安藤庄平、美術横尾嘉良、音楽黛敏郎、録音紅谷愃一、照明岩木保夫、編集丹治睦夫、スチール寺本正一。
河原崎長一郎(吉岡努)、浅丘ルリ子(三浦マリ子)、加藤治子(三浦ユリ子)、小林トシ江(森田ミツ)、加藤武(森田八郎)、岸輝子(森田キネ)、夏海千佳子(深井しま子)、
江角英明(武隈)、江守徹(長島繁男)、山根久幸(友人太田)、辰巳柳太郎(清水修一)
織賀邦江(清水綱子)、大滝秀治(清水修造)、北原文枝(清水友枝)
中村孝雄(清水修巳中)、阪口美奈子(清水由起子)、小沢昭一(大野義雄)、佐々木すみ江(赤提灯のてる)、遠藤周作(医者)、佐野浅夫(医者)、園佳也子看護婦園佳也子。
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