「洋画っぽい邦画の佳作。」妖女の時代 こっこさんの映画レビュー(感想・評価)
洋画っぽい邦画の佳作。
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2025年5月投稿。
本作は1988(昭和63)年に、バブル景気で浮かれたフジテレビが作った、遠藤周作の古いサスペンス小説2作を土台にした、大森一樹監督の脚本の本気度も伝わる、ハードボイルドチックな中々の良作である。
ミステリーで言えばいわゆる《双子を使ったトリック》なのだが、その双子(葉子と裕子)を演じた名取裕子さんの美しさ,妖艶さ,そして不気味さを余す所なく楽しめる作品だ。名取さんはそれまで比較的「お嬢さん的な」上品な役が多かったので、この作品で一気に《悪女,魔女》っぽい役柄に挑戦して、見事に演じ切った感がある。
主人公の探偵(的な)役は、ボクシングですっかりダイエットした片岡鶴太郎さん。お笑い芸人からシリアス俳優への脱却を図っていた頃である。
脇を固める田中邦衛等の配役も良かった。
バブル期なのでお金の使い方が豪快なのが、かえってこの作品にスゴくマッチしているのだが、何故かヒットしなかった。
名取さんと鶴ちゃんのコンビでいえば『異人たちとの夏』が有名だが、コチラは本当に隠れた名作である(鶴ちゃんはコレで日本アカデミー助演男優賞を取っている)。
ヨーロッパの伝説的な吸血魔女奇譚を、日本へ持ち込んだところに多少無理が有ったのかも知れないが、名取さんの演じ分けは完璧で、今見ても吸い込まれるような蠱惑的な魅力に充ちている。
ラストシーンの名取さんの意味有りげな微笑みは、本当に美しい…。
多分DVD化されていないかも知れないが、Rが付くほどの中身でも無いので、もっとテレビ放映もして欲しいものだ。
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