劇場公開日 1950年8月8日

「紀子三部作の合間に」宗方姉妹 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5紀子三部作の合間に

2024年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1950年。小津安二郎監督。大佛次郎原作を読み返したのを機に12年ぶりに再見。働かない夫の代わりにバーを開いて家計を支えるけなげな妻とアプレな妹が、妻のかつての恋人との関係めぐってやりとりする。結末は原作と同じだが、そこにいたる因果関係が大胆に変更されており、夫の背景が描かれないことによって、より夫の暴虐性が際立っている。さらに後期の小津作品ほどには形式化は進んでいないものの、向かい合う人物の取り方や振り向き方、場面展開の音楽と風景は形式的に処理されていてモダン。
田中絹代と高峰秀子という、人気と実力を兼ね備えていると言われているのに個人的にどうにも合わない2人が共演しているので、初見から気乗りしないまま見ていたが、やはり小津作品の田中絹代は痛々しい。
この前が「晩秋」で直後が「麦秋」であることを考えると不思議な気持ちになる。じめじめと暗い情念が少しずつからからと明るく処理されていく過程とも見える。そういう意味ではこの映画の高峰秀子の「小芝居」ははずみになったのかもしれない。

文字読み