劇場公開日 1950年8月8日

「新しいって事はいつまで経っても古くならない事」宗方姉妹 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

新しいって事はいつまで経っても古くならない事

2024年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 小津安二郎監督が松竹を離れて初めて撮った大佛次郎原作小説の映画化作品です。

 昔の邦画メロドラマの苦手なパターンが「優柔不断なインテリ風の男がグズグズ拗ねているだけ」という人物像です。優柔不断の僕にそんな事言われたくないと言われるかも知れませんが、同じ場所で足踏みしているだけに見えるこんな男と向き合っていると僕はただただイライラして来るのです。でも、そんな作風からは距離を置いていると思っていた小津監督がこんな作品を撮っていたとは思いませんでした。愛する人を胸に秘めたまま、失職したままグダグダしている夫と暮らす姉、奔放に自由に生きる妹の物語です。

 でも、本作中の山村聡さんが「戦争で傷ついた懊悩を背負った男」とも思えないし、田中絹代さんの決断も高峰秀子さんの振る舞いも「新しい女性像の表象」には見えませんでした。本作中で述べられる「新しいって事はいつまで経っても古くならない事」の言葉を借りれば、この映画は古いんじゃないのかな。

 ただ、映像の切れ味は流石で、ペロッと舌を出す高峰秀子さんの可愛さは別格でした。彼女はいつまでたっても古くならない女優さんです。

La Strada