霧笛(1934)

解説

無声映画時代に「メニルモンタン」と「秋の霧」の二作品が紹介されたディミトリ・キルサノフの監督作品で、スイス生まれの作家C・F・ラミュズの小説『種族の隔離』をベンジャマン・フォンダーヌの脚色により映画化したもの。主役は、「帰郷(1928)」「悲歌」のディタ・パルロと「燈台守」のヴィタル・ジェーモンの二人で、キルサノフの前二作品に出演したナディア・シビルスカヤ、舞台の俳優リュカ・グリドゥー、「テレーズ・ラカン」のジャンヌ・マリー・ローラン、オーギュスト・ボヴェリオ、等が助演している。キャメラはヴィクトル・グリュックとニコライ・トポルコフの担任で、音楽は「最後の戦闘機」「罪と罰(1935)」のアルテュール・オネガーがアルテュール・オエレと協力して書卸したものである。

1934年製作/フランス
原題または英題:Rapt

ストーリー

スイスは各種族のこもごも住んでいる国である。一つの山が間にあると、山の向こうと此方では違う言葉を話し、異なる風俗を持ち、互いに理解し得ぬのである。その一つ、ヴァレイザンの若者フィルマンは或日、山に登って、向こう側のベルノアの若者ハンスのために愛犬を殺された。フィルマンは、この復讐のため、ハンスの許嫁エルジーが夜、山を歩いているところを襲い、彼女を己れの村に攫って来る。だが、フィルマンには母もあれば許嫁のジャンヌもいた。フィルマンは母に説かれ、また自責のためにエルジーを山に送り返そうとしたが、路が雪で絶たれたので、エルジーを己れの家に閉じ込めたままで置く。その内に、フィルマンはいつとはなしにエルジーに恋を覚える。或日、ハンスの頼みを受けた行商人マチアスが、このフィルマンの村に来て、エルジーに、彼女を探して弟ゴットフリートが崖から落ちて死んだこと、彼女を救い出す手筈などを伝えて帰る。エルジーは近づいて来た祭りの日を利用して逃げ様と考え、安心させるためにフィルマンに微笑を送る。それに心を掻き立てられたフィルマンは、祭の日に彼女を伴って遊びに出、却って苦しむ様になり、遂に母も村も友達も棄てて、エルジーの誘うままに彼女とともに彼女の村へ行って暮らそうと思う。けれども、村人達が全部、祭りで村を開けた其の日の朝、エルジーはかねて己れに恋している知的障害者を使って村に火を放たせる。そして混雑に紛れて逃げ様とするが、ふとフィルマンに済まない気がして彼の室に行く。二人の抱いた姿を見た男は嫉妬の憤りから室に外から鍵をかけた。かくて、焔はフィルマンとエルジーと二人の姿を包んだ。この時、一方では村が火事と知って駆せ帰ったジャンヌが力つきて路傍に倒れていた。

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