ビルマの竪琴(1956)のレビュー・感想・評価
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ビルマで亡くなった多くの日本兵士の弔い映画なのだろうが不満を覚えた
市川崑 監督による1956年製作の日本映画。配給:日活。
市川崑監督による「細雪」の映像,特に短いショットで繋ぐリズム感が大好きで、監督の昔の作品も見たいということで本映画を鑑賞。
ヴェネツィア国際映画祭サン・ジョルジョ賞受賞の著名な映画で有るが、正直この物語を好きになれなかった。また、映像も特に印象に残らないもので、期待はずれであった。
徹底して、日本人のことにしか頭にない視点が嫌であった。確かに大勢の日本兵の死体(死者16万7千人とか)はあっただろう。しかし、闘った敵兵(中国軍死者10万人、英軍は戦死者14326人行方不明者・負傷者・捕虜59583名とか)や傷つけた或いは生活を痛めつけたかもしれない現地人はどうだったのか(NHKによれば住民の死亡者9万4千人)?原作があるにせよ、アジアに大きな惨禍を引き起こした国民としての意識のかけらが少しは制作側にあっても良いのではと思ってしまった。
ビルマの物売り婆さんを、北林谷栄が演じている。それ自体は良いとしても、変な日本語ながら、あれだけ多くを話せるのはかなり不自然に思えた。そして,ビルマの僧侶は戒律によって楽器の演奏は禁じられているそうなので、ビルマの文化を馬鹿にしているとも思ってしまった。
とは言え、竪琴の音色は美しく、戦争が終わったのに関わらず部下兵士の全滅を強要する指揮官の存在は、日本軍の酷さを良く描いていた様にも思え、その点では評価できるのかも。
原作者竹山道雄は、日本の評論家、ドイツ文学者、小説家で日本芸術院会員。第一高等学校教授、東京大学教養学部教授とか。音楽好きの隊長演ずる若き三國連太郎が佐藤浩一にそっくりでビックリ。音楽は『ゴジラ』テーマ曲で有名な伊福部昭さん。
監督市川崑、脚色和田夏十、原作竹山道雄『ビルマのたてごと』(童話雑誌『赤とんぼ』(実業之日本社)に1947年3月から1948年2月まで掲載)、製作高木雅行、撮影横山実、美術松山崇、音楽伊福部昭、録音神谷正和、照明藤林甲、吉田協佐、助監督舛田利雄。
出演
三國連太郎井上隊長、浜村純伊東軍曹、安井昌二水島上等兵内藤武敏小林一等兵、西村晃馬場一等兵、春日俊二牧一等兵、中原啓七高木一等兵、土方弘岡田上等兵、花村信輝中村上等兵、青木富夫川上一等兵、千代京二大山一等兵、伊藤寿章橋本一等兵、小柴隆清水一等兵、宮原徳平永井一等兵、加藤義郎松田一等兵、峰三平阿部上等兵、三橋達也三角山守備隊々長、成瀬昌彦兵隊一、天野創治郎兵隊二、森塚敏兵隊三、小笠原章二郎兵隊四、佐野浅夫脱走兵、中村栄二ビルマの老僧侶、北林谷栄物売りの姿さん、澤村國太郎物売りの姿さんの亭主、伊藤雄之助村落の村長、長浜陽二竪琴を弾く少年。
今こそ分かれ目、いざさらば
映画「ビルマの竪琴(1956)」(市川崑監督)から。
戦争前・戦争中・敗戦後の日本軍の様子を題材にした映画は、
いくつも観てきたが、小隊の統制のために「合唱」を活用する、
それだけでも信じられなかったが、戦時中のドロドロした描写は少なく、
妙に清々して気持ちで観終わった。
それだけ、音楽に力があることを物語っているとも言える。
特に、泥だらけで精神も疲れているはずの彼らが歌う「荒城の月」は、
主線を歌うだけでなく、しっかりハモっていて、驚いた。(汗)
井上小隊が、戦時中どれだけ規律が守られていたかを説明しなくても、
この一曲の合唱を耳にするだけで、一致団結が理解できるのは、
メモに値した。
主役の水島上等兵が、井上小隊を離れ、訳あってビルマ僧となり、
竪琴演奏を通じて、仲間の日本兵に向けて別れを告げるシーンは、
繰り返して観ても、胸が痛くなるほど切ない。
その光景を思い出させる曲は「仰げば尊し」。
私たち世代は、卒業式の定番ソングとして、何度も口にした名曲であり、
歌詞の最後となる「今こそ分かれ目、いざさらば」が、
日本へ帰還する日本兵の仲間と、ビルマに残る水島との別れと重なり、
その光景が目に焼き付いて離れない。
静かな戦争映画だったなぁ。
P.S.
画面に表示された「ビルマ語」(ミャンマー語かな?)
記号みたいで、ポケモンの「アンノーン」かと思った。(笑)
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