劇場公開日 1995年5月27日

「単純なリメイクではない」ひめゆりの塔(1995) バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0単純なリメイクではない

2025年8月17日
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鑑賞方法:映画館

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神山征二郎監督が端正に丁寧に撮った佳作。今井正監督の1982年版『ひめゆりの塔』(今井監督が自身の1953年版の水木洋子脚本をそのまま用いてリメイク。原作は石野径一郎の小説)で助監督を務めた神山が、1953・1982年版の水木の脚本と、仲宗根政善のノンフィクション『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』を原作として監督した映画で、おそらく沢口靖子周辺が水木脚本、永島敏行周辺が仲宗根著書だと思われるが、両者が違和感なく融合していて不自然さは感じさせない。

第二次世界大戦を扱った日本の映画は被害ばかりが描かれ、加害の面があまり描かれないということはよく指摘されるが、沖縄戦を題材とした映画は沖縄という地域の独特な立ち位置もあって、そういう批判から逃れることができているように思う。また、ひめゆり学徒隊という年端も行かぬ少女たちが死地に追いやられる悲劇もストレートに観客の心に響いてくるものがある。個人的には今観ても劇場公開時に観た時と同じ印象で決して古さは感じないんだが、よほどの映画ファンを除けば自分が生まれる前に作られた映画を観ることはあまり多くないだろう。そう考えるとたとえリメイクであろうとこういう題材の映画を何十年か置きに作っていくことは必要なんではないかとも思う。

バラージ
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