緋牡丹博徒 お命戴きますのレビュー・感想・評価
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ラストシーンのお竜の表情だけで観る価値あり!
正義:結城菊太郎(鶴田浩二)、妻に先立たれ10歳の男の子を育てる正義のヤクザ!鉱毒で稲が育たず困窮する農民たちのために立ち上がる!
悪:鉱毒を垂れ流す鉛鉱山の所長&金と権力に目がない横暴軍人&義理人情よりもお金のヤクザ
ストーリーはいつもの勧善懲悪です。正義のヤクザが殺され、悪のヤクザへ復讐を図る物語でなんの目新しさもありません。
上目遣いのお竜の目線は「こいつは殺すべきか、殺さぬべきか」と、常に相手を値踏みしているかのよう。そして殺すと決めた相手は必ず殺します。殺すべき時には殺して殺して殺しまくります。
「あんたに人殺しをさせたくなかった…」お竜の身代わりに死んでいった第1作の高倉健の言葉がもはや虚しく響きます。
恨みを呑んで死んでいった者達に成り代わり正義を遂行する美しき鬼神であり、和服が似合う戦慄の血塗られた人外、それがお竜です。
ラストシーン。
菊太郎の初七日の法要に集まってきた敵の一味に殴り込み。ラスボスを追い詰め、刺殺したお竜。なぜかそこに菊太郎の子がやってきて一部始終を目撃!子どもの視線に振り向くお竜。稲光に照らされるざんばら髪のお竜の横顔。お竜の表情に、本当の姿を見られてしまった!という衝撃が浮かびます。この凄惨で壮絶なお竜の表情を観るためだけでも、この映画を観る価値があります。
手癖で作った感が強い
前作『お竜参上』に引き続き加藤泰が監督ということで期待して鑑賞したが、いや、お前これ、完全に手癖だけで作っとるやないかい!
『お竜参上』にはあれだけ漲っていたエロスと緊張感はほとんど感じられず、形骸化した技法ばかりが悪目立ちしていた。障子や襖といった日本家屋の構造をふんだんに活かしたショットは散見されるものの、それらが総体として一つの流れを作り上げているという感じがしない。
ただ、鶴田浩二演じる親方の通夜シーンの長回しは見事なものだった。フィックスだけでここまで立体的かつダイナミックな運動を撮ることができるというのはやはりすごい。その後の画面が暗転してお竜だけにスポットが当たるという演出も、少々やりすぎの感はあるものの美しかった。
ラストはかなり酷い。敵の首魁を殺し終えたお竜。そこへ彼女を母のように慕うガキが似顔絵を持って笑顔で現れる。しかしこの一連のくだり、あまりにも唐突であり、また唐突さに必然性がない。そもそも組の存続を賭けた殺し合いが今まさに繰り広げられている最中に、似顔絵を抱えて笑顔でウロチョロするようなガキがいるだろうか。あまりにもガキを舐めすぎなんじゃないか。色鉛筆を買い与えたという伏線を回収するのに躍起になるあまり、演出では誤魔化し切れない論理的破綻が生じてしまっている。
素晴らしいショットはところどころみられるだけにいっそう悔しい出来の一作だった。
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