「今回の主役は待田京介とお竜ファーストの熊虎親分!」緋牡丹博徒 鉄火場列伝 jin-inuさんの映画レビュー(感想・評価)
今回の主役は待田京介とお竜ファーストの熊虎親分!
今回の舞台は阿波おどりで有名な徳島。お竜は殺人罪の刑期が明けた子分、清吉を迎えに刑務所へ。清吉は高熱で身動きできない体ですが、融通の効かない看守に叩き出されてしまいます。
雨の中、人力車で医者を探してさまよう二人。その窮地を救ってくれたのは見ず知らずのお百姓たちでした。家に泊めてくれただけでなく、なけなしの薬や食料を惜しげもなく差し出してくれるお百姓たち。生活は苦しいはずなのに、正体不明の自分たちへ親切に接してくれるお百姓たちに、お竜は深々と頭を下げます。
清吉は息を引き取る前に、大阪の博徒を殺してしまった理由は「お竜さんは博徒としては一人前かも知れないが、女としては片輪ものだ」と馬鹿にされたのが我慢ならなかった…と言い残しあっけなく亡くなります。意味はよく分かりませんが「女として片輪もの」と言われたお竜の表情は曇ります。
お竜は清吉の四十九日が終わるまで、この村で働きながら過ごすことにします。珍しいお竜のバイト姿が楽しめます。
この村のお百姓たちは生活苦のため、やむなく小作争議に打って出ます。お百姓たちに頼られるのは元ヤクザで今はカタギの江口幸平(待田京介)。弁が立つため旦那衆との交渉役を買って出ます。
いつもは「不死身の富士松」としてお竜に従う待田京介ですが、今回は大役ゲット!お竜に説教かましたり、お竜に心を寄せられたりと大活躍。鶴田浩二、丹波哲郎、里見浩太朗など並み居る俳優陣を従え、見事な助演男優っぷり。本作は影の主役、渋く苦み走った待田京介の魅力を堪能できます。
困った地主の旦那衆は地元のヤクザ、徳政一家に事態の収拾を依頼します。徳政一家を率いる3代目の武井親分は元々は江口の子分で、江口から跡目を引き継いだ間柄。武井と江口の間にも亀裂が走ります。さらに徳政一家の配下の鳴門川一家は大ボス観音寺にそそのかされ、徳政一家の乗っ取りに動き出します。
小作農、茂作の息子猪之吉の博打好きを利用して借金を作らせ、そのカタに茂作の娘を拉致。その娘と夫婦約束をしているイケメンヤクザ、千吉(里見浩太朗)は惚れた女を守ろうと、鳴門川にドスを向けてしまいますが、あっさり敗退。結局お竜が博打で稼いで金を作り、娘を奪還します。
仏壇の三次(鶴田浩二)は渡世の義理で殺めた男の娘を引き取り、その子の母を探しながら旅を続ける流れ者です。わらじを脱いだ武井、子どもを預けた江口、お竜たちを陰ながらサポート。
阿波踊りに合わせて開かれる大尽賭博に招待され徳島へやってきた大阪の博徒、小城(丹波哲郎)はお竜を呼び出し、決闘を迫ります。小城の子分をお竜の子分、清吉が殺したためでした。お竜は頭を下げ、勝負を祭りの後まで延期してもらいます。町に乗り込んだ小城は観音寺と鳴門川のあくどいやり方に気づき、間接的にお竜をサポート。決闘は無期限延期に。
大ボス観音寺は道後の熊虎の兄弟分であり、お竜とは「回り兄弟」。観音寺はお竜を呼び出し、小作争議の収拾工作を依頼します。渡世の義理か人情か。普通は板挟みで悩むところでしょうが、お竜そんなことで悩んだりしません。すぐさま道後へ行き、熊虎に事情を話します。熊虎もそんなことで悩んだりせず、当然お竜サイドw。二人して徳島へとんぼ返り。
そんな中、鳴門川たちにより、江口が重傷を負わされ、千吉(里見浩太朗)、三代目の武井は次々に惨殺。かたきを取ろうと一人で乗り込んだ仏壇の三次(鶴田浩二)も観音寺により射殺されます。
さあ舞台は整いました。美しき殺戮マシーン、お竜の手が血に染まります。カメラは阿波踊りの扮装姿で敵を倒すお竜の足元を追いかけます。
さらに熊虎も兄弟分のはずの観音寺を躊躇なく斬り殺します。お竜のためなら渡世の義理など屁でもない!常に「お竜ファースト」の痛快な熊虎親分でした。
小作争議やヤクザ一家の下剋上、ヤクザと元ヤクザの確執、裏で糸引くあくどい大物、大阪からやってきた重鎮ヤクザ、流れ者親子の悲しい事情などが入り乱れ、なかなか複雑な構成の脚本ですが、名作だと思います。ただ、配役紹介のオープニングクレジット、手書き文字じゃなくてPゴシックフォントなのはいただけません。テンション上がりません。