劇場公開日 1969年10月1日

「シリーズ完成形」緋牡丹博徒 鉄火場列伝 タンバラライさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0シリーズ完成形

2024年2月22日
PCから投稿

オーソドックスなヤクザものを作ろうと思ったら、もうこれ以上のものはできない・・・ そういう 完成された作品だと思った。 この作品はそれを目指して作ったものであろうと。 こういった ヤクザものを面白く見せるためには、次から次へと新しいキャラクターを投入しないと話が持たない。 という 脚本戦略のもとに作り上げられ、それが成功した形であろう。人間関係が複雑すぎ 登場人物が多すぎる?・・それは観客の注意をそらさないための 一つのテクニックである。でないとベタなネタが多すぎて飽きられてしまう。 タランティーノ が パルプフィクションとレザボはドッグでこの手法を応用して成功している。特筆すべきは 鈴木則文が 脚本家として参加している 点である。「11人の侍」 といい、彼の 脚本家の力が ここに見てとれる。 冒頭の、お龍 がなぜこの町にしばらく住むことになるかというエピソード からして とてもよく描けている。それによってこのシリーズを見たことがない人も主人公に気持ちが移ったことであろう。
この時の藤純子は最高に美しい。この時にこの作品ができて本当に良かった。 色が白いのでカラーフィルムにとてもよく映える 。 映画全般のカラーがとても美しい。この独特の少し ベタベタした ネガフィルムの味が良いのだよ。 これだけいい 色が出ているということは 照明などに相当金をかけている。 これだけ金をかけて 映画を撮り続けることができたのなら 日本映画は未だに 世界一であっただろう。テレビが登場し 鉄腕アトムや鉄人28号が放送されても映画は負けなかった。日本映画は カラーに負けてしまったのだ。 ・・・フィルムと 照明だけでなく もちろんレンズ も 非常に 味が出ている。ピントがあっているところ以外はボケていて、そのボケがとても美しい。
私はこのシリーズとか、殴り込みのヤクザモノを あまり たくさんは見ていないが、今まで見た中では これが今までで一番良かった。これがある以上もうオーソドックスなものは作れない。・・と考えると キル ビルがなぜあんな風になったのか っていうのがわかるような気がする。 タランティーナは 鈴木則文作品をいっぱい見てるから。

タンバラライ